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上海市では、日本を手本に、NPO団体による認知症者・家族への支援など、認知症ケアが本格展開されている。中でも、最も注目されているのが、グループホームである。

 

 

上海市のグループホームは、①20~40床の規模、②ユニット型共同生活(1ユニット6~8名)、③個室を推奨、④職員の人員配置は3:1、と定義づけられている。

中国の中でも高齢者人口率が最も高い上海市には約20万人の認知症高齢者がいるとされている。
しかし、中国では認知症ケアのノウハウや実績のある施設が少なく、また認知症は精神病としてみなされてしまうことから、介護施設から入居拒否をされたり、精神科病院に入院したりするケースも少なくない。
このような背景から、上海市政府は年間1000床の認知症者専門用ベッドを整備するという施策を打ち出した。昨年は約1200床が創設されており、今年も1000床超が見込まれている。

 

 

先日、国内最大手の在宅訪問介護事業者「福寿康」が経営する民家改修型のグループホームを訪問した。市内からは車で40分ほどの嘉定区にあり、個室16室、2人部屋7室でベッド数は30床。
今年6月にオープンし、現在は8名が入居している。いずれも精神科病院から転院してきたり、ほかの施設で入居を拒否されたり、家族による介護が難しい状況だったりした人たちである。入居当初は、認知症の症状がみられたが、4ヵ月が経過した今、みんな平穏な生活を送っているという。
建物は緑に囲まれ、近くには池もあり、テラスに出て深呼吸したくなるような環境だった。内装も家庭的で暖かい雰囲気に包まれていた。

 

この施設は、ハード・ソフト面ともに、日本を手本にしているそうで、日本での留学や実務経験のあるスタッフが活躍している。日本東北大学大学院医学系研究科卒業の理学療法士が経営幹部にいるほか、日本の看護師資格を持っているスタッフも働いている。日本語が堪能で、常に日本の介護情報にアンテナを張り、身体拘束ゼロや減薬の取り組みを実践している。

 

 

「認知症ケアについては、日本からもっといろいろ教わりたい」と意気込む施設長。認知症ケアの分野では、日中交流の成果が確実に実り始めているだけでなく、すさまじい速さで進展している。そんな上海の今の介護事業が垣間見えた。

 

 

王 青氏
日中福祉プランニング代表

中国上海市出身。大阪市立大学経済学部卒業後、アジア太平洋トレードセンター(ATC)入社。大阪市、朝日新聞、ATCの3社で設立した福祉関係の常設展示場「高齢者総合生活提案館ATCエイジレスセンター」に所属し、広く「福祉」に関わる。2002年からフリー。上海市民政局や上海市障がい者連合会をはじめ、政府機関や民間企業関係者などの幅広い人脈を活かしながら、市場調査・現地視察・人材研修・事業マッチング・取材対応など、両国を結ぶ介護福祉コーディネーターとして活動中。2017年「日中認知症ケア交流プロジェクト」がトヨタ財団国際助成事業に採択。NHKの中国高齢社会特集番組にも制作協力として携わった。

 

 

 

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