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“収支差率”は参考程度か

 

第177回介護給付費分科会が6月1日に開催されました。次期介護報酬改定が2021年4月に迫る中、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、約2ヵ月ぶりの開催となりました。今回は、この給付費分科会での議論とともに、次期改定の行方を論考します。

 

 

 

分科会では、「平成30年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査の結果」として7つの調査研究事業の報告が行われました。

 

 

 

合わせて、次期改定に向けて示されたテーマは、
①地域包括ケアシステムの推進
②自立支援・重度化防止の推進
③介護人材の確保・介護現場の革新
④制度の安定性・持続可能性の確保

の4つです。

 

 

 

いずれも、従前より継続して進めてきた社会保障改革の流れに沿ったテーマですが、分科会での議論は「新型コロナウイルス感染症の影響拡大を受けて今後どのような対策を検討していくのか」に集中しました。

 

 

 

コロナ禍で世の中のありようは一変しましたが、介護業界も同様であり、従って、次期改定の行方は、感染拡大の状況に大きな影響を受けることとなります。とりわけ介護事業者にとって最も関心の高い介護報酬単価については、2つの相反する方向性での議論が今後考えられます。

 

 

 

1つは、今回のコロナ禍によって、デイサービスやショートステイをはじめ多くの介護サービスの収益が大幅に悪化しており、その影響は長期化することが予測されることから、介護事業者支援の観点より、報酬単価はプラス改定が必要であるという方向性。

 

 

 

もう1つは、コロナ禍によって過去最大規模の補正予算が成立し、社会保障費の抑制による財政規律の是正が求められることとなり、報酬単価はマイナス改定が必要であるという方向性。現段階においては、どちらの方向性にも議論が進んでいく可能性を秘めていると言えます。

 

 

 

報酬単価は、この年末年始ごろに決定されることから、その時の感染拡大による影響や、世論の動向を踏まえた政治情勢によって、方向性のかじ取りは決定されます。5月には「令和2年度介護事業実態調査」に基づく調査票が対象事業所に送付されており、これまでは、この調査結果に基づく〝各サービスの収支差率〞の結果が報酬改定に最も大きな影響を与えることとなりましたが、今回は事情が異なります。

 

この調査結果ではコロナ禍による収益影響が反映された数字とはならないため、〝収支差率〞は今回に限り、報酬改定において参考程度の数値になることが予測されます。

 

 

 

これまでとは異なる情報源に基づいて行われる異例の次期改定の行方に、今後も注目していきたいと思います。

 

 

 

斉藤正行氏
2000年3月、立命館大学卒業後、㈱ベンチャーリンク入社。メディカル・ケア・サービス㈱の全国展開開始とあわせて2003年5月に同社入社。現在の運営管理体制、営業スキームを構築し、ビジネスモデルを確立。2005年8月、取締役運営事業本部長に就任。2010年7月㈱日本介護福祉グループ副社長に就任。2018年4月㈱ピースフリーケアグループ代表に就任。2018年6月、介護業界における横断的・全国的組織となる一般社団法人全国介護事業者連盟を結成。㈱日本介護ベンチャーコンサルティンググループの代表を務めている。

 

 

 

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