老健と医院をITがつなぐ
65歳以上の割合が総人口の21%を超える「超高齢社会」を迎えた日本。国際的にみても有数の長寿大国として注目される一方で、現場では高度な医療ケアを必要とする重介護度の方や、早期に認知症を発症する高齢者が増えています。この問題に立ち向かうためには、適切な診療を行う「医療」と生活の質を支える「介護」の連携がかかせません。この連載では脳外科医で現役ベンチャー経営者という経歴を持つ私の視点から、医療と介護の未来について取り上げていこうと思います。
第1回のテーマは「オンライン診療」です。医師と患者がインターネットを介して診察ができ、外来診療、入院診療、訪問診療に並ぶ第4の診療スタイルとして近年注目を集めています。タブレットやスマートフォンがあれば自宅などでも診察が受けられるという手軽さから需要が高まっており、導入する医療機関も増加傾向にあります。今回は実際の介護現場ではどのような使われ方をしているのか、導入例をご紹介します。
オンライン診療の動向に注目
栃木県日光市にある見龍堂クリニックかわせみでは2018年3月よりオンライン診療アプリCLINICS(クリニクス)を導入し、同法人内の老健施設である今市Lケアセンターでオンライン診療を始めています。それまで老健施設の入所者は必要な検査・治療を受ける際などクリニックに移動していましたが、時間がかかり付き添いをする介護スタッフや看護師の負担は大きな負担になっていました。オンライン診療導入後は移動の回数が少なくなり、大雪などの天候にも左右されず安定的に医師とコミュニケーションが取れるようになったのです。その結果、いままでスタッフが移動の付き添いにかけていた時間も別の作業にあてられるため、業務の効率化や業務負荷の軽減に効果があると言えます。
オンライン診療は法的整理をはじめガイドライン作成など模索の最中であり、用途や利用範囲が変化していく可能性もありえます。そのためCLINICSをはじめとしたサービス提供者側も起きうる課題に柔軟に対応し、ITの活用でよりよい生活ができる土壌を作るため、現場の声や需要を吸い上げて改善を繰り返しています。
本当に必要とするサービスは何か、そしてその課題はどこにあるのか。それをしっかりと見極め、ITを駆使して解決に導いていく力が求められてきていると、強く実感する日々です。
豊田剛一郎氏
メドレー代表取締役医師
プロフィール
1984年生まれ。2009年東京大学医学部卒業。脳神経外科医として勤務後、渡米しミシガン小児病院で脳研究を行う。その後マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。2015年2月より株式会社メドレーの共同代表に就任。「介護のほんね」「ジョブメドレー」「MEDLEY」「CLINICS」など、医療・介護分野に特化したサービスを提供し、納得できる医療の実現を目指している。著書に「ぼくらの未来をつくる仕事」。
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