公益社団法人全国老人福祉施設協議会(以下・老施協/東京都千代田区)は、「自立支援介護」に関する意見書を12月5日、塩崎恭久厚生労働大臣に提出した。「要介護度改善を唯一の評価尺度におき、加算等の一個の仕組みに固定化すべきではない」と、自立支援介護の考え方・在り方が限定されることに懸念を示している。
リハビリ強要につながる心配も
11月10日に開催された、第2回未来投資会議において「自立支援介護を促進する」「自立支援の尺度を要介護度改善に定める」「2018年介護報酬改定で、自立支援により要介護度を改善させた事業所にはインセンティブを導入する」といった内容の提案がなされた(本紙11月16日号1面参照)。
老施協では「自立支援の理念取組を通じて要介護者を含む高齢者の健康を維持・向上させることについては、何の疑問も無く、一層の促進を図るべき」と理解を示しつつも、要介護度改善を自立支援介護の唯一の評価尺度とすることは、以下の様な問題を生じさせる可能性があると指摘する。
1、介護サービス事業者が、要介護度改善の見込みが難しい高齢者の受け入れを拒む
2、利用者に対し、望まぬ栄養摂取やリハビリテーションなどを課すことになる
3、在宅復帰を望まない、あるいは在宅生活への適応が困難な利用者にも「在宅復帰をすべき」との脅迫観念を与える
その上で「介護保険制度の運用に当たっては、介護関係者が多様な制度や仕組みを最大限に活用し、支援が必要な人に対して、その時に最適かつ必要と考えられる方法を持って対処すべき」と訴えている。
入所者の重度化「自然の摂理」
また、特養については「中重度者の受け入れが原則となっていることもあり、加齢とともに利用者の状態が重くなることは、自然の摂理である」「入所後に、施設や本人の努力により、ベッドから離れることができたり、外出が可能になったりと、暮らしの質が向上する例もあるが、こうした暮らしの質の向上が、必ずしも要介護度に反映されるわけではない」とし、要介護度改善だけを尺度とすることにはそぐわない、とした。
「ADLは、QOL向上実現のための手段のひとつであり、それ自体を自立と捉えることはできない。目的はQOLの向上、自己実現に向けた介護をめざすことにあります」
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