北京にあるシンクタンクの調査によると、もし中国で高齢者施設の人員配置を3:1にすると、介護職は約500万人不足するという衝撃的な結果が明らかとなった。事務職やそのほか専門職を含めると、さらに人材不足は深刻な問題であることが浮き彫りとなった。
中国の介護現場では、施設・在宅問わず農村部から出稼ぎにやってきた女性、いわゆる「4050(40代~50代)」が主要点な人力となっている。
政府は近年、高齢社会に対して様々な施策を打ち出しており、それをビジネスチャンスと捉え、大手企業の参入が急増した結果、介護業界に関心を持つ若者は増加した。また、上海や北京などの大都会では、介護職の賃金も大卒のOLと同じ水準まで改善した。
しかし、実際には若者が介護現場に就職すると、数ヵ月で辞めてしまい、定着しない。彼らの介護業界への理想と現実のギャップがあまりにも大きいようだ。
ある施設では、若手職員が入社後、一定期間の研修を受けたにもかかわらず、現場に実際に出ると、何もできず、そのうち辞めてしまったり、介護以外の業務を希望したりするケースが続出しているそうだ。インターンとして受け入れた若手職員も5人しか残らなかったという。
これらの原因に、若者のほとんどが一人っ子であるが故に、両親に大事に育てられ、身の回りのことも自分でできないことが挙げられる。自立する前に、いきなり見知らぬ高齢者の世話をすることには無理がある。
このような状況が続くと、介護事業者はやむなく「4050」の中年女性を歓迎するようになる。彼女たちは子供だけでなく、親の面倒を見ていることも少なくなく、生活経験が豊富だ。守るべき家族が故郷にいる彼女たちは、長期で働いてくれる人が多く、安定した人材である。
先にあげたシンクタンクが大学の介護学部や専門学校に通う3000人の学生を対象に実施した調査によると、7割の学生が介護の仕事に従事する意欲があるが、残り3割は「給料が低い」「仕事がきつい」「お年寄りとのコミュニケーションがとりにくい」などの理由で、従事する意欲がなかった。
調査対象となった3000人は、女性の割合が圧倒的に多く、さらに農村部出身者で低所得の家庭の出身者が多い。このような学生は、経済的な事情により、就職先の選択肢が少ないため、ハードルの低い介護職を選ばざるを得ないという。
実際、中国の介護事業者は介護職に住居と三食を無料提供しなれば、人材確保が困難な状況だ。
中国でも日本でも、この介護人材にかかわる問題は共通であり、そして道のりは平坦ではない。
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