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 10月1日に就任したワタミの介護(東京都大田区)吉田光宏新社長は、それまで6年間、配食サービスのワタミタクショク社長を務めてきた。タクショクの経験・ノウハウを高齢者住宅事業の現場にどのように活かしていくのか、介護保険制度改正・介護報酬改定を来年に控える中、高齢者住宅事業をどのように展開していくのか、話を聞いた。

サ付き第1号 11月5日開設

──今後の高齢者住宅事業の展開についてはどう考えているか。

吉田 特定施設が主軸、という点はこれまでと変わらない。ただし、これまで開設してきたホームの中には、入居率が想定を下回っているものもあり、入居費用などについて新たなビジネスモデルを検討しなくてはならない、と考えている。今後は個々のホームについてよりマーケティングをしっかりと行っていく必要性があるだろう。

──サービス付き高齢者向け住宅(以下・サ付き住宅)も手掛ける計画がある。

吉田 来年5月に神奈川県の湘南台駅近くに開設する計画だ。訪問介護、デイサービス、居宅介護支援事業所を併設し、介護サービスも自主運営する。ただし実験的な開設との位置付けであり、外付け介護サービスの高齢者施設の理想的なモデルを、このサ付き住宅で研究していく。有料老人ホーム「レストヴィラ」と同一地域で共生できることも重要であり、入居者対象者層などはレストヴィラと若干変えていく予定だ。サ付き住宅のブランド名も、レストヴィラとは異なるものにしていく可能性があるが詳細は未定だ。

個々のニーズ正しく把握を

──今後、どのような高齢者住宅を手掛けていきたいと考えているか。

吉田 まずは、当社の最大の差別化ポイントである食事にこだわりたい。現在、ほぼ全てのホームで導入している栄養マネジメントを強化し「食べることで健康に」を追及していきたい。また、これはワタミタクショク時代から追及してきたことであるが「地域密着」「地域との共生」「地域への開放」にこだわりたい。高齢者住宅はどこも地域密着をうたってはいるが、実際の商圏はかなり広いものになっていた。より、地域のニーズに応じた、地域のための高齢者住宅になることが求められている。

──そのためには何が必要か。

吉田 高齢者住宅が「地域の人たちにとって敷居の高い存在」であってはならない。高齢者住宅では祭りなどのイベントに地域住民を招くなどして地域住民との交流・地域開放を行っているが、イベントの時だけ来てもらうのでは意味が無い。常日頃から地域の人たちが気軽に足を運べるように、敷地や建物の一部を地域コミュニティスペースとして開放するなどの取り組みが必要だろう。

──来年の介護保険制度改正・介護報酬改定で、高齢者住宅の運営にはどのような影響が出ることが考えられるか。また、それへの対応策は。

吉田 今後、介護報酬が増加していくことは考えにくく、それに対応できる経営体質になることが求められる。設備投資などが過剰になっていないかなど、見直しを図る必要性も出てくるだろう。また、介護事業者の中には介護保険外サービスに力を入れていくことで、介護報酬の落ち込みをカバーしようという考えも強い。その考えは必要だが、肝心の「全額自費のサービスについて、現在の介護保険サービス利用者の間にどの程度のニーズがあるのか」といった研究が十分になされているのか疑問だ。来年8月以降、所得に応じて一部高齢者の自己負担が2割に引き上げられることもあり、介護保険サービス利用者個々のニーズ動向をしっかりと把握することが大事だ。

──前職のワタミタクショクでの経験、ノウハウなどを高齢者住宅運営の現場でどのように活かしていくか。

吉田 ワタミタクショク時代に常に掲げてきた「地域の高齢者が安心して住み続けることができるための手伝いをする」という基本的な部分は変わらない。以前は食事の提供を通じてそれを行ってきたが、これからは住まいの提供を通じて行っていく。タクショク利用者がレストヴィラに入居する、というケースは年々増えてきているので、このルートをさらに強化していきたい。

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