ワタミ(東京都大田区)は、同社100%子会社ワタミの介護(同)の発行済全株式を損保ジャパン日本興亜ホールディングス(以下・SOMPOホールディングス/同新宿区)へ譲渡することを発表した。譲渡額は210億円。譲渡予定日は今年12月1日。今年8月末時点で高齢者住宅を8558室運営する(高齢者住宅新聞社調べ)大手企業の身売りは、業界再編の引き金になることも考えられる。
特定施設が中心 近年はサ付きも
ワタミは2005年3月にアールの介護の全株式を取得する形で介護事業に参入。首都圏を中心に「レストヴィラ」のブランドで介護付有料老人ホームを展開し急速に事業を拡大させてきた。近年はサービス付き高齢者向け住宅の開設やデイサービス事業の拡大、入居費用を抑えた新ブランドの有料老人ホーム「みずき」の立ち上げなど、事業の多角化を進めていた。
ただし、主力事業である国内外食事業は、消費者ニーズの多様化などに対応しきれず業績は低迷。2015年3月期の通期決算では126億6800万円の赤字を計上していた。こうした中で、不採算外食店舗の閉鎖などリストラを進めており、介護事業についても譲渡先を探していた。
メッセージやシダーにも出資
一方、SOMPOホールディングスは、子会社の損害保険ジャパン日本興亜が2012年9月にシダー(北九州市)の株式の34%を、今年3月にはメッセージ(岡山市)の株式の3・4%を取得するなど、急速に介護業界との関係を強化している。
今回の株式譲渡についてワタミでは「介護については、事業としての中長期的な発展に向けて抜本的な対策を講じる必要性を感じていた中で、SOMPOホールディングスより株式譲渡の提案を受けた。
また、譲渡後も引き続き、ワタミの介護で運営していた介護事業所に対する食事の提供はワタミグループで行っていくことになっている」とコメントしている。
ワタミの発表資料によると、運営する有料老人ホームの入居率は78%台と、この数ヵ月ほぼ横ばいで推移している。新しいスポンサーの下で、どの様な形で再生を図っていくのかが注目される。
また、これでSOMPOホールディングスが出資する介護事業者は3社となるため「今後、SOMPOホールディングスはシダーの出資比率を引き上げた上で、ワタミの介護と統合させるなど大幅な再編を図っていく可能性もあるのでは」(大手介護事業者)と、業界の再編に繋がるとの見方もある。
ちなみにワタミでは、100%子会社のワタミフードシステムズをワタミ本体に吸収合併させることも同日併せて発表した。
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