医療法人凌仁会ホームケアクリニック田園調布(東京都大田区)は在宅医療による緩和ケアを推進。小林徳行理事長は大学病院勤務時から麻酔科医として緩和ケアチームに参加。その経験を在宅医療に活かしている。小林徳行理事長に在宅での緩和ケアの現状とその必要性・可能性について聞いた。
──在宅医療に取り組み始めたきっかけは。
「大学病院で麻酔科医として痛みのコントロールを担当し緩和ケアチームに参加。緩和ケア研修会の企画・運営で在宅医療に携わる医師と出会うようになり、在宅医療の社会的必要性を感じることとなった」
「ペインクリニックとしての専門性を活かした在宅診療をできないかと考え、5年ほど前から訪問診療専門の医療機関で勤務。一昨年、当院を開設した」
──がん患者の緩和ケアは格段に進歩したと言われている。
「オピオイド製剤のポンプによる持続投与や貼付剤などの開発により、薬物治療による痛みのコントロールは非常に進歩した。鎮痛薬、鎮痛補助薬のバリエーションも増えた。在宅医療でもこれらの処方は一般的になっている」
──神経ブロックを活かした緩和ケアにも取り組んでいる。
「どれだけ薬物治療が進歩しても、また骨転移痛に対する放射線治療などを施しても、痛みのコントロールに難渋するケースはある。神経ブロックは血流の改善や痛みの悪循環を断ち切ることが可能。薬物だけではコントロールできない痛みに効果的。神経ブロックが有効であれば、薬物の必要量を減らすことができる。またオピオイドを硬膜外や脊椎くも膜下腔の神経ブロックに用いれば、経口投与での用量より理論的に10分の1~100分の1に減らすことが可能。必然的に副作用のリスク軽減ももたらす。熟練すれば、神経ブロックは在宅医療でも施行可能であり、非常に有用な方法」
──現在の患者数や看取りについては。
「クリニックから半径5キロ圏内で大田区・世田谷区・品川区・目黒区・川崎市・横浜市などが主な訪問エリア。がんや心不全、脳梗塞、認知症などの在宅患者を90人ほど診ている。医療依存度の高い患者も多い。看取りは年間40人近く。昨年12月は特に多く、7人を看取った」
──開設2年で看取りの実績が豊富だが、増患や診療体制については。
「地域に自宅で看取りを実践するクリニックが少なかったようで、地元の医師会から近隣の病院の紹介を受けた。それらの医療機関の退院患者やケアマネジャーから患者を紹介してもらっている」
「現在は常勤医・非常勤医各一人、常勤看護師一人の体制。看護師はケアマネジャー資格を有し、訪問看護の経験もあるため、持続的なケアや多職種間の連携を担っている。10ヵ所以上の外部の訪問看護ステーションとも連携。今春には非常勤の医師をもう一人雇用する予定」
──今後の緩和ケアについては。
「在宅の現場では、患者の状態の変化をいち早く知ることでき、QOLの向上にも成果をあげられることが分かった。緩和ケアを通して、訪問医として最大限の支援を行いたい」
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