国立研究開発法人科学技術振興機構(埼玉県川口市、以下・JST)の戦略的創造研究推進事業総括実施型研究プロジェクト「染谷生体調和エレクトロニクスプロジェクト」では、1週間皮膚に貼り続けても明らかな炎症反応を認めない上に、装着していることを感じないほど超軽量で極薄の「ナノメッシュ電極」の開発に成功。装着感のない生体情報計測手法として、健康づくりや医療、介護、スポーツへの応用が期待される。
同プロジェクトは、2011年8月~2017年3月にかけて、シリコンに代表される従来の無機材料に代わり、柔らかく、かつ生体との適合が期待できる有機材料に着目し、生体とエレクトロニクスを調和させ融合する全く新しいデバイスの開発を目指したもの。東京大学大学院工学系研究科(東京都文京区)の教授であり、国立研究開発法人理化学研究所(埼玉県和光市)の染谷薄膜素子研究室主任研究員(同研究所創発物性科学研究センターチームリーダー)を務める染谷隆夫博士を中心とした研究チームは、慶應義塾大学医学部(東京都港区)の天谷雅行教授(理化学研究所統合生命医科学研究センターチームリーダー)らとの共同研究により、このほど「ナノメッシュ電極」の開発に成功した。
装着感のないセンサー開発
この電極は生体適合性の高い金と高分子(ポリビニルアルコール)に、ナノサイズのメッシュ構造を持たせたもの(以下・ナノメッシュ電極)で、少量の水で簡単に皮膚に貼り付けることができる。
20人の被験者に対して1週間、かぶれと皮膚アレルギー試験を実施したところ、明らかな炎症反応を認めないことが示された。このような高い生体適合性は、今回のナノメッシュ構造が高いガス透過性を持っていることによって自然な皮膚呼吸が実現されたことによるもので、従来のフィルム型やゴムシート型では実現できていないという。
さらに、この「ナノメッシュ電極」を用いて金属などの導体に触れたり、離したりしたときの抵抗変化や温度、圧力センサーの動作実証、腕の筋電計測を実施し、生体計測への適用可能性も実証。1週間貼り続けても炎症反応を起こさず、装着感のない生体情報計測手法として、シニアビジネスへの応用が期待されている。同研究成果は、2017年7月17日に英国科学誌「Nature Nanotechnology」のオンライン速報版で公開された。
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