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ベネッセスタイルケア(東京都新宿区)は、大都市部を中心に介護付有料老人ホーム(介護付きホーム)をドミナント式に展開している。重度者対応・認知症ケアなどに注力する一方で、大幅な処遇改善や成功事例を共有する「ベネッセメソッド」の社内発信など、ケアに直結する労務環境改善にも取り組んでいる。滝山真也社長に話を聞いた。

── 報酬改定をどう捉えていますか

滝山 地域包括ケアや在宅復帰といったテーマがある中で、独居、老々介護、認知症の問題と在宅の限界を迎えている人は多くいます。病床も減少する中、終の棲家は必要であり、病院も有老とのつながりを重要視してくれています。重度者対応や看取りの場不足など日本が抱える課題に応えられるサービス類型が、看取りができる「終の棲家」介護付きホームだと思います。介護付きホームは職員配置基準が明確で包括算定方式のため、顧客が負担する月額負担量の変動が少ないです。また、特別養護老人ホームよりも介護報酬は低く、国による建築費の補助もありません。民間事業者が法人税を支払うことも考えれば介護付きホームは、社会保障費抑制の観点からももっと評価されるべきサービス類型だと言えます。

── 重度者対応・認知症ケアの取り組みは

滝山 各エリアに、24時間看護師を配置した「メディカルホーム」や、機能訓練指導員を概ね週40時間配置した「リハビリホーム」などをつくってきました。こうしたホームは今後も一定比率で増やしていく考えです。

認知症ケアにおいては「ちょうどいいサービス」と「班活動」という取り組みを行いました。「ちょうどいい」というのは、「やりすぎない」ことです。例えば血圧測定のケースでは、血圧計と記録用紙を置いておけば、測定から記録、看護師に報告するまでを自身で行える人がいるとわかりました。自らの健康状態を把握でき、文字を書く習慣、人と話す習慣にもなるため、これだけでも大きな効果があります。

「班活動」は、料理や園芸など、好きなことで班を作ってもらう活動です。例えば料理班なら、何を作るかを入居者同士がホワイトボードを使って相談し、包丁も使い調理します。スタッフが見守るので、家ではできなかった揚げ物なども楽しめます。自宅ではなく「老人ホームだからこそ」できることだと思います。

──  こうした事例や取り組みを「ベネッセメソッド」として共有するそうですね

滝山 これまで20年以上介護事業を行ってきた中で、成功事例はたくさんあります。しかしこれを再現性のある取り組みに落とし込む力が不十分であったため、この度「ベネッセメソッド」として言語化しました。認知症ケアに関するメソッドは現在20ほどあり、もうすぐ社内向けに発信する予定です。

具体的で取り組みやすい認知症ケアや自立支援の「仕掛け」を活用するメソッドは、ホーム間で横展開していくためのツールです。「老人ホームに入るとできないことが増える」と思われがちですが、そうではなく「あきらめていたことができる場所」でありたいと思っています。

── 記録システムを独自開発しました

滝山 これまで紙ベースだった記録を、順次システムに切り替えている状況です。単なる効率化のためのシステムではなく、「気づき」を促すことにこだわってつくりました。

── 人材について

滝山 東京23区の介護職の有効求人倍率は、今年5月現在でパートが約13倍、正社員は7・2倍です。現在は欠員を派遣で補っていますが、今後2年間のうちに直接雇用のスタッフのみでの運営を目指していきます。また、13億円を投資して行った大幅な処遇改善により、他業界での就労を目指す人にも介護業界に魅力を感じてもらい、また、長く働いてきた社員に報い、男性が結婚を機に退職せずにすむような給与水準にしました。人材確保・定着の課題解決を目指すとともに、新卒採用にも注力します。今年の4月は約370名の新卒を迎えましたが、来年はさらに多く採用したい考えです。

外国人人材については、受け入れに向けて準備中です。11月以降にまずは10人を受け入れ、慎重に3桁へと増やしていきたいと思っています。

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