上野千鶴子氏らが集会、300名参加
上野千鶴子氏(認定NPOウィメンズアクションネットワーク理事長)、樋口恵子氏(NPO法人高齢社会をよくする女性の会理事長)、大熊由紀子氏(国際医療福祉大学大学院教授)らが呼びかけ人となった介護保険制度を考える集会が14日、衆議院第一議員会館で開かれた。全国から約300人が参加。社会保障審議会の議論を振り返り、今後の制度運営に強い危機感を訴えた。
14日の「介護保険の後退を絶対に許さない!1・14院内集会」には、全国の介護現場から事業者、医療従事者、家族、研究者などおよそ300人が参加。上野氏と樋口氏による開会の挨拶では、今回の改定案が社保審の介護保険部会と介護給付費分科会に先立って財務省の財政制度等審議会に提出されたことを挙げ、財政主導の議論や制度設計しか行われていない状況に危機感を表した。
21年度改定の導入は見送られたものの、今回の社保審で俎上に上がった「要介護1、2の総合事業移行」「ケアプランの有料化」に加え、▽生活支援外し▽利用者負担率の上昇▽介護報酬の切り下げを含む全6項目に関し、利用者の視線に基づく撤回や慎重な議論を求めるとし、今回の集会参加者一同による声明文として決定した。
声明文の中では、介護保険の制度創設から20年目を迎えることについて、「度重なる改定は利用制限と利用料上昇の歴史であり、介護保険が『だんだん使えなくなる』、その結果『おうち(在宅)がだんだん遠くなる』危機感を抱いている」と記載。この20年間の介護環境の変化を政策形成に採り入れるとともに、現場の利用者や介護従事者の声を適切に反映するよう、政策決定過程を見直す必要性も指摘している。
今回の集会には元衆議院議員の山崎摩耶氏も出席。「介護保険の財政は黒字。皆さんの支払う介護保険料が制度当初よりも大幅に増える一方、国は公費投入を減らしている。こういう財政構造をウォッチしていくべきだ」と指摘。加えて、制度創設時を振り返り「市区町村の首長は『第二の国保になる』と懸念を示したが、介護保険はそうならなかった。黒字のままサービスを削る状況について財政とリンクして戦っていく必要がある」との見解を示した。
集会終了後の記者会見で上野氏は、介護保険の創設時からの「財政ありき」の圧力に関し、「基本的には私たち国民がそうした財政のあり方を許してしまっている。これを押し戻す力は世論しかない」と述べ、今回の集会の意義を説明。さらに「20年目を迎え、介護保険をどう育てるか、未来指向型の議論を進めていかなくてはならない」と強調した。
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