宗教法人善了寺(横浜市)の地域密着型デイサービス「還る家ともに」(同)では、利用者だけではなく、地域住民の社会的な居場所づくりに取組んでいる。
2005年に開設された「還る家ともに」は寺院「善了寺」に併設。開山は1278年、宗派は浄土真宗。境内にはほかにNPO法人カフェ・デラ・デラの運営するカフェ「ゆっくり堂」があり、誰でも利用できる。ゆっくり堂や本堂では、一般向けに月4~5回、法話会、映画上映会、大学教員を招いた大人ゼミなどのイベントを開催。地域に親しまれやすい宅老所のような存在を目指している。
ここのボランティアとして活躍する80代女性Aさんは、単身遠方から戸塚区に移り住んだ。地域のコミュニティ活動に参加したいと思い、大手事業者が運営するデイにボランティアを申し出たが、「高齢だから任せられない」という理由で断られてしまったという。
そんなAさんをボランティアセンターから紹介された還る家ともにでは、ボランティア活動がAさんの安否確認となると考え、活躍してもらうことを決めた。現在、ボランティアを通じて仲間も増え、地域商店街の日帰り旅行に参加するなど、充実した日々を送っているという。
傾聴通じて心境変化
また、70代女性Eさんの例では、ここでのボランティア活動がEさんへのグリーフケアの場となっている。Eさんの夫は92年に他界し、善了寺の檀家となった。同デイの開設時には、食事づくりのボランティアをしていたが、10年には娘が病死し、家にこもる日々が続いていたという。
Eさんに坊守(住職の妻)は傾聴のボランティアを提案。当初は「落ち込んでいる自分でも役立てるなら」といった消極的な気持ちで参加していたEさんであったが、デイ利用者の話を聞くうちに「苦しいのは自分だけではない」と前向きな気持ちになれたという。夫と娘の眠る墓所の近くで活動することが、Eさんの安心に繋がっている。
コミュニティの入り口に
三根周所長は「社会で生きづらさを感じている人がボランティアを通じてコミュニティへ参加するきっかけとなったことや、共同住宅での暴力から逃れられる駆け込み寺としても役立った事例があります」と話す。
弱さ認め、共生する場
「老化、生きづらさ、その人の抱える悲しみなど、人間の持つ弱さを否定するのではなくそれを認め合って共生できる、そのような場を実現したいです」と、ソーシャルインクルージョンの場として、さらなる発展を目指す。
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