医療と介護の最前線 試練続く
新型コロナウイルス感染症(以下・新型コロナ感染症)による政府の緊急事態宣言を受け、医療崩壊の回避に向けた制度面の変更や介護現場における警戒態勢の強化など、業界ではめまぐるしい動きが生じている(4月10日時点の情報に基づき作成)。
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業界大手も緊迫状況
今後の新型コロナ感染症患者の増加に伴い、感染症病棟や一般病棟において同患者の受入れが困難になった場合を想定し、「地域包括ケア病棟入院料の算定病棟」「療養病棟入院基本料の算定病棟」で受け入れる場合は、それぞれ「在宅患者支援病床初期加算」または「在宅患者支援療養病床初期加算」を算定できることになった。これらの変更について、厚生労働省は8日付で事務連絡を行った。
中医協閉会後、厚労省の担当者は「診療報酬の新規項目設定など大がかりな変更は議論と時間がかかるため、従来の診療報酬体系の中で特例を認める形で医療現場を支援していく」としており、今後の状況によって特例的な見直しが追加される可能性を示唆している。
緊急事態宣言で対象区域とされた7都府県(初回発表)を中心に、地方自治体による宿泊・滞在施設の確保も急ピッチで進んでいる。心肺補助(ECMO)システムを備えた感染症指定医療機関などには重症者、その他の医療機関、施設、自宅は軽症者というトリアージ体制が構築されつつある。
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オンライン診療も実施
「初診は対面診療」を原則としてきた厚労省と日本医師会だが、新型コロナ感染症の院内感染拡大で医療崩壊の危機に瀕し、新型コロナ感染に限定してオンライン診療を容認する姿勢に転じた。各都道府県は対応できる医療機関のリスト化を進めており、4月中には感染の有無を判定するオンライン診療が実施される見込み。
介護の現場でも緊急事態宣言を受けて様々な対応を迫られている。特に入所型施設では病院などと同様の重要な社会インフラとして事業継続が求められている。
4月6日時点で対応方針を決定していた学研ココファン(東京都品川区)は、「サービス付き高齢者向け住宅における安否確認・緊急時対応、また訪問介護、通所介護、ショートステイ、小規模多機能型居宅介護、訪問看護いずれのサービスも休止・縮小はしない」と表明。
スタッフの確保に関しては、「ブロック(エリア)ごとに緊急応援対象スタッフリストを作成。各事業所でのサービス提供に支障がない人員を確保する」とした。また、罹患者発生時対応について「対応ガイドライン」を策定。
「高齢者住宅入居者・サービス利用者」「スタッフ」の罹患者発生時のプロセスと対応をまとめている。さらに、スタッフの労務的措置として、罹患者が発生した拠点に出勤するスタッフに対しては「防疫手当」を支払うとし、該当事業所スタッフは1日あたり3000円、他事業所からの応援スタッフは同5000円としている。
SOMPOケア(東京都品川区)も「利用者の命を守ることに集中し、基本的には事業継続する」と表明。人員確保が難しくなってきた介護現場においても、介護付きホームなどの施設では入浴回数の調整や、訪問介護では身体介護を中心にするなどのサービス内容の見直しや事業縮小で対応する方針を示している。
スタッフ管理では「施設系においては、食事は全員でなく複数回に分けて3密を避ける。スタッフの負担も考慮し、居室配膳ではなくダイニング利用は継続する」とした。また、緊急事態宣言の対象都府県で介護現場に勤務するパートを含む社員に対し、特別手当を支給するとし、人員が不足した現場には、本社からフォローに入る態勢を整えた。
利用者に対しては、サ高住の入居者にデイサービス利用自粛を要請。デイサービスやショートステイは基本的に継続予定だが、自治体とも連携し休止を判断する可能性もあるとしている。
東京都は10日、「通所介護などの福祉サービス・保健医療サービスを提供する施設については、適切な感染防止対策の協力を要請する」との方針を発表。これについて、介護・保育現場の法務・労務に詳しい法律事務所かなめ(大阪市)の畑山浩俊代表弁護士は「以前の名古屋のケースとほぼ同じ。介護保険最新情報810号に準じた内容だと思う」と述べた。
職員ケアも課題
公益社団法人全国老人福祉施設協議会(東京都千代田区)は8日、得津産業医事務所(福岡県北九州市)と提携し、介護従事者の精神的な負荷を軽減するため、無料の電話相談窓口を設置した。産業医に無料で電話相談ができる。
日本介護クラフトユニオン(NCCU)は、組合員が働く各法人に「新型コロナウイルス感染症の対応に関する要求書」を提出している。発熱などの症状がある組合員や感染が疑われる組合員への対応で法人の自主的な判断で休業させる場合、原則100%の賃金補償を行うことなどを求めた。また、新型コロナ感染症の影響で事業所を休止・縮小などする場合には組合への事前通知も求めている。
NCCUによると、「デイサービスやショートステイ等が休業になり、ケアプランが作れない」「在宅のご利用者からサービス拒否された」「職員が仕事中に感染した場合の補償が分からない」などの声が組合員から寄せられ、今回の要求書に至ったという。
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