社保審 第8期介護保険計画に向けて
2021年度の介護報酬改定に向けた議論が再開された。1日に厚生労働省が開いた社会保障審議会介護給付費分科会(分科会長 田中滋埼玉県立大学理事長)において、改定の裏付けとなる各種統計調査が公表されたが、前回改定で導入されたADL維持等加算や生活機能向上連携加算の算定普及が進んでいないことが明らかになった。こうしたリハビリ関連加算の「使い勝手」の改善が論点の1つになりそうだ。
20年度では初開催となった社保審介護給付分科会はオンラインで開催。昨年12月に決定した改定方針を具体化していく本格的な議論が始まった。
厚労省は前回の18年度改定に関する「効果検証及び調査研究」として、各種の統計調査を公表。特に前回改定で新設された加算などについて委員間で意見を交わした。
注目が集まったのはリハビリ関係の算定状況の低迷。19年4月の調査時点で、全国において「ADL維持等加算」ⅠまたはⅡを算定していた事業所は、デイサービスで578施設(2.6%)、地域密着型デイサービスは57施設(0.3%)にとどまった。
厚労省は介護保険総合DBを用いて算定の制約要件を分析。その結果、地域密着型デイでは「5時間以上の通所介護費の算定回数が5時間未満の算定回数より多い利用者で、6ヵ月以上連続利用者が20名以上」との要件が算定を妨げる要因として最も影響していることが判明。同要件を満たす地域密着型デイは16.8%にとどまる。
未届け理由に「BI負担」
ADL維持等加算を届け出ている全国の事業所は、19年4月時点でデイが3741ヵ所(16.9%)、地域密着型デイで657ヵ所(3.9%)。つまり、届出をしていないデイで80%超、地域密着型デイは95%超となる。
届け出ていない理由で、最も多いのは「要介護度3から5の利用者割合が算定要件の15%以上を満たさない」で47.3%、次いで「バーセルインデックス(BI)を用いた評価の負担が大きい」が43・3%だった。
BIに関しては「BIを用いた評価をできる職員がいない」(32.0%)、「BIを用いた評価の方法が分からない」(27.5%)といった意見も上位に入った。さらに今後のADL維持等加算の届出・請求予定に関し、届出を予定しているとした248施設のうち、55.6%が届出に向けて必要な取り組みとして「BIを用いたADL評価ができる人材の確保・教育」を挙げた。
生活機能向上連携加算も
今回の一連の調査結果では、18年度改定で見直し・拡充が行われた「生活機能向上連携加算」も算定状況の低迷が目立つ。算定していたのは事業所・施設ベースで4384ヵ所(3.1%)にとどまる。
施設別の算定率では、認知症対応型グループホームが7.6%、介護老人福祉施設が6.3%で他施設よりも高かった。最も低いのは訪問介護の0.4%。
都道府県別に算定割合の差が大きいという特徴があり、最も高いのが徳島県(8.7%)、最も低いのが秋田県(0.8%)。全体に東日本の自治体で低い傾向が見られる。
算定していない理由は「外部とのリハ事業所との連携が難しいため」がどの施設区分でも多いが、「算定に取り組む余裕がない」「かかるコスト・手間に比べて単位数がわりに合わない」(デイ)、「算定に取り組む余裕がない」「加算適用の必要な利用者がいない」(訪問介護)との意見もあり、介護報酬事務の煩雑さも一因とみられる。
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