散骨や在留外国人の葬式などを手掛ける燈台舎(東京都立川市)は、新型コロナウイルス感染症による死亡者の搬送、安置、火葬を、神奈川県の搬送・安置事業者と共同で開始し、5月中旬までの約1ヵ月間で14件に対応した。松木修平社長に話を聞いた。
エンバーミング推奨 感染リスクの軽減も
――新型コロナ感染症で死亡した方の遺体対応を行おうと思ったきっかけは。
松木 当社は、エンバーミング(遺体衛生保全)会社と提携し、エンバーミングの販売・受注も行ってきた。ダイヤモンド・プリンセス号で亡くなった外国人は、亡くなる直前の約2週間はPCR検査で陰性の状態が続いており、医師から陰性を証明する診断書も発行されたので、遺族の要望でエンバーミングをしてお別れを行い、火葬してお骨で本国に帰ってもらった。それがきっかけで、今後、同様の死亡者が増え、需要も増えるだろうと予測し、4月から受注を始めた。
―― 14件の内訳は。
松木 葬儀会社からの依頼が多い。搬送のみ、安置のみ、搬送から火葬まで全て行うという3パターンで受けているが、全て行うというパターンがほとんどだ。その要因は、葬儀会社が新型コロナ感染症遺体に対する対処の仕方が分からず、感染する恐れがあることが主だ。また、葬儀会社が安置室を持っていても、風評被害の恐れもあるので自社で安置したくないとか、病院の安置場所が足りないケース、さらに安置専門施設で新型コロナ感染遺体を感染症対策上、安全に安置できる設備がほとんどないなどの要因もある。
――新型コロナ感染遺体の対応を受ける上で気をつけていることは。
松木 遺体をどのように処置しているか分からないと、感染する不安がある。そのため、葬儀会社が「遺体は搬送するので安置だけして欲しい」という依頼は断っている。
――対応していて難しいことは。
松木 感染の疑いがある遺体で、「病院に置いておくスペースがないので、早く連れ出して欲しい」と言われるケースが増えている。
感染の疑いがある場合、当社は防護服を着て対応させてもらうが、家族は感染の恐れがあるという認識がなく家族感情もあり、温度差が大きく対応が難しいのが実情だ。病院によっては、「納体袋が不足しているから葬儀屋さんで行ってほしい」と、丸投げのように依頼されるケースもあった。
――今後の方針は。
松木 多くのエンバーミング会社が加盟する日本遺体衛生保全協会が、4月中旬からコロナ感染症遺体にエンバーミングを施すのは、各事業者の判断に任せることにした。これを受け、当社と提携しているエンバーミング会社は、4月下旬からコロナ感染症遺体に施術していくことにした。
コロナ感染症遺体で今、特に問題になっているのは遺族が顔を見てお別れができないこと。エンバーミングを施せば、感染の恐れを極力軽減することができる。費用も25万円(税別)程なので、お別れを希望する人には積極的に勧めていきたい。
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