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中国では経済発展に伴い、尊厳死への意識が高まっている。緩和ケアのレベルは世界の中でも下位ランクだと指摘されている中国では、近年政府はホスピスの増設、そして死生観を見直すための啓発活動を始めた。

 

最期を迎えようとしている人をどのように支え、尊厳のある送り方をすべきなのか。それはその人の精神的・身体的苦痛を軽減するだけでなく、医療費の削減という側面からも大きな意義を持つ。

 

中国では、「死」は忌むべきこととされているため、介護施設を建設する場合、地域住民による反対運動が起こることもしばしば。緩和ケア病院となるとなおさらだ。

 

北京にある緩和ケア病院は、開設当初は6床だったが、ニーズに応じて病床数を拡大。それに伴い11年間で7回も移転を強いられた。周辺住民から反対され、場所が決められなかったという。
このような背景のために、緩和ケアは長い間、置き去りにされていた。十数万人にも及ぶ患者がいるにもかかわらず、緩和ケアの病床数はわずか数千。供給と需要のギャップは極めて大きい。

 

欧米の緩和ケアには多くのボランティアが関わっている。中国でもボランティア活動は盛んだが、緩和ケアでの活動は消極的で、経験が少ない。
これらの状況を踏まえ、政府はようやく動き出した。緩和ケア病院の設立や介護施設における緩和ケアの実施に当たり、優遇措置を与えた。専門職の育成も助成する。
特に高齢者と児童の緩和ケアについては、民間に委託することで、強化を図る。

 

中国国家衛生と健康委員会(医療機関を管轄する政府機関)は2017年、全国範囲で5つの市(区)を緩和ケアの試行都市として指定した。今年6月には第2弾として追加の都市が発表され、計71市(区)となった。上海市は唯一全域で試行する都市である。
18年末の統計によると、上海で指定緩和ケア病院は200ヵ所、病床数は900ある。また家庭ホスピス病床は700床。これまで述べ2万8700人の患者が緩和ケアサービスを受けた。

 

最初に指定された緩和ケア病院(10床)は、地上三階建てで談話室、沐浴室、告別室などが設置されている。家庭的な雰囲気で家族は24時間いつでも見舞いができる。昨年は136人をこの病院で看取った。平均病床利用率は88%で平均入院日数は18日間だった。

 

政府は今後、介護施設における緩和ケア体制を整えていく方針だが、多床室が主流で、かつ死亡者の9割が病院で亡くなっているのが現状だ。「死」に対する人々の価値観や意識が変わらなければ、日本のような施設での「看取り」への道はまだまだ険しく遠いだろう。

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