厚生労働省は10月25日、労働政策審議会を実施。70歳までの高齢者の就業機会の確保に向け、事業主に課す努力義務の具体例を提示した。
個々の労働者の多様なニーズに鑑み、他企業への再就職のための企業間契約締結などが求められる。
同審議会ではこれまでにも、人生100年時代における働く高齢者のための環境整備に関する議論が行われてきた。事業主の義務である65歳までの希望者全員の雇用確保措置に加え、今後70歳までの就業機会の確保を努力義務として盛り込みたい考えだ。
そのための新たな措置として「他企業への再就職の実現」については、特殊関係事業主による継続雇用制度の導入と同等のものを検討。事前に他企業と契約締結をするなどして、個々の労働者の多様なニーズに柔軟に対応していく方針となる。
なお、「定年廃止」「定年延長」「継続雇用制度の導入」については、65歳までの雇用確保措置と同様。さらに、高齢者のモチベーションに配慮した、能力や成果を重視する評価・報酬体系の構築支援、キャリア形成支援・リカレント教育などの支援にも乗り出す。
高齢労働者の事故 労災の26%占める
70歳までの雇用拡大を進める一方、高年齢労働者の労働災害も増えている。2018年に労災に遭った60歳以上の労働者は前年より10・7%増加し、労災全体の4分の1を占めた。高齢者が安全に働ける環境づくりなどの対応が急務だ。
10月30日に行われた「人生100年時代に向けた高年齢労働者の安全と健康に関する有識者会議」でも、労災防止対策の取り組み状況などが報告されている。中でも墜落・転落および転倒、そして交通事故の件数は、60歳以上かつ勤続1年目の労働者が最も多い。
こうした事態を受け、政府は働く高齢者のための環境整備も推進。中小企業を対象とした手すりやスロープなどの導入費用を助成する。この助成金については、20年度の予算概算要求に「高齢者の特性に配慮した安全衛生対策を行う企業への支援」として新規に盛り込まれ、3・4億円を組み込む方針だ。
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