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集中連載 フィンランド リトアニア視察レポート

 

施設から在宅へ、民営化も促進

フィンランドの介護・福祉は税で運営され、基礎自治体がサービスを整備・調達し(民間委託等)、提供されている。1990年代には施設から在宅へ、公から民への政策転換で、老人ホームや長期療養病床は1/3が削減され、代わって高齢者や障害者の「サービス付住宅(24時間対応)」が民営化で拡充されてきたが、さらに市場化・グローバル化が進んでいる。

 

 

一方で、75歳以上の90%は自宅暮らし(2019)だが、男女共働きが普通のライフスタイルもあって老親のための介護離職はないに等しいが、05年には行財政改革の中で「近親者介護支援法」を制定、親族介護の社会化・手当支給をし、インフォーマルケアも推進している。

 

 

グローバル企業Esperi Careのサービス付住宅

Esperi Care社は、全国200の自治体(311自治体中・17)から委託を受け、サービス付住宅を展開しているが、入居者8000人、看護やラヒホイタヤなど専門スタッフ6300人を擁する、フィンランドでも5本の指に入る大手グローバル介護会社で、UKのファンドICGグループ傘下でもある。

 

 

ヘルシンキ市に隣接するヤルヴェンパー市でそのサービス付住宅のひとつを視察した。1993年に市立で開設、2016年からEsperiの運営となり、24時間ケア付きと自立型(24時間ケアなし)、認知症のユニットケアがある。

 

 

24時間ケア付きの入居基準は、在宅ケアで「1日に3回以上の訪問介護」が必要になった時、独居にリスクがあるとき、徘徊など認知症の症状の進行した時などが対象になる。

 

 

ケア責任者・ラヒホイタヤのMeruiさんは20年キャリアのベテラン。フィンランドファッションのマリメッコを思わせる赤と白の明るいデザインのユニフォームで生き生きと説明してくれた。施設内はシンプルながら美しいデザイン、明るい色彩で飾られ、インテリアにも認知症への配慮がみられる。どのフロアにも「サウナ室」があり、単に身体の清潔や健康目的だけでなく〝社交も商談もサウナで〞というフィンランド人には不可欠だという。

 

 

入居者は家賃(600〜700ユーロ)のみ自費で、ケア費用は自治体(公費)から給付される。
18〜27平米の個室でシャワーとトイレ付。広い部屋にはキッチンもある。
入居者60人にスタッフ40人(1対0・5)の配置で、ケア付きのユニットには、寝たきりで胃ろうや点滴等の重度介護者も入居、認知症フロアは8〜9人が1ユニットでケアされる。

 

 

看取りケアには、スタッフの看護師やラヒホイタヤが中心となるが、がんなど緩和ケアの必要な人には、地域のホームホスピスチームがやってきて一緒にケアをする。ケアの質の高さもうかがえる。

 

 

Inter RAI方式で質評価
フィンランドは高齢者の自立度を5段階で評価して要介護認定をし、ケアプランを作成、MDSやRAI-HCを使用している自治体も多い。

 

 

また質の評価をInter RAI方式で行っており、現場のデータがTHL(保健省のシンクタンク)にインターネットで送られ、質の測定と結果をベンチマークで公表していることは、ツールはともかくわが国も大いに参考にすべきだろう。民営化の背景には質の確保という政策のグリップも効いている。

 

 

山崎摩耶 元衆議院議員・前旭川大学教授

訪問看護のパイオニアとして訪問看護制度創設に尽力。介護保険は創設時より社会保障審議会・介護保険部会、介護給付費分科会、ケアマネ養成、身体拘束ゼロ作戦会議の座長等でかかわる。日本看協会常任理事、日本訪問看護振興財団常務理事、全国訪問看護事業協会常務理事を歴任。2009年衆議院総選挙に北海道比例で初当選。2017年総選挙では惜敗。主な著書は「患者とともに創る退院調整ガイドブック」中央法規出版社、「最新訪問看護研修テキスト」日本看護協会出版会(編著)など著書、論文多数。

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