---医療・介護が変わるto2025---
2040年を目指した議論はどこへ?
9月20日に首相官邸で安倍晋三首相を議長とする「全世代型社会保障検討会議」(以下、検討会議)の初会合が開かれた。
会議の冒頭、安倍首相は、「少子高齢化と同時にライフスタイルが多様となる中で、人生100年時代の到来を見据え、年金、医療、介護、労働など、社会保障全般にわたる持続可能な改革を更に検討する」とあいさつした。検討会議は経済財政諮問会議など関係する政策会議の代表者を一堂に集めている。そして年内に年金や介護を中心に中間報告を示し、年明けに高齢者の自己負担増や薬剤給付の見直しの議論を行い、来年6月の骨太の方針へむけて最終報告をまとめるとのことだ。
ただ検討会議のメンバーや会議メニューをみるとこれまでの既存の会議の代表で構成され、会議メニューもこれまでの議論の総まとめといった感じで、目新しいものはない。また日程も来年2020年の骨太の方針へ向けた準備作業という短期的な位置づけも気になる。
中長期議論の行方
そもそも今回の検討会議は12年11月から始まった社会保障制度改革国民会議(以下、国民会議)の後継会議という位置づけのはずだった。国民会議は、12年の自公民三党合意のもと、社会保障と税の一体改革の流れの中でスタートした。国民会議は社会保障制度改革推進法に基づき設置され、その報告書が11回の議論を経て13年8月にとりまとめられた。これに基づき作られた医療介護総合確保法が14年6月に成立する。なお国民会議では団塊の世代が後期高齢者になる「2025年」が改革の目標年とされた。
しかし、本検討会では団塊ジュニアが前期高齢者に達する「2040年」へ向けての中長期議論の予定はどこにもない。
たしかに安倍首相自身が今回の消費増税に当たって、今後10年は消費増税を行わないと明言していることもあり、また首相自身の自民党総裁任期の問題もあって、前回の国民会議のように腰を落ち着けて、長期的な展望にわたる議論はできないという事情もあるのだろう。
ともかくも消費増税がなされた今、4.6兆円の歳入が期待されている。そして幸いなことに現在は戦中・戦後直後の人口の比較的少ない世代が高齢化している時期なので、社会保障費の自然増の伸びも落ち着いている時期だ。つまり高齢化の風の凪の時期でもある。
しかし2022年から団塊の世代が後期高齢者に達し、いよいよ本格的な高齢化の嵐に突入することになる。このため遅くとも21年には本格的に「2040年問題」を目指した、骨太の「国民会議NEXT」を開始すべきと考える。
武藤正樹氏 国際医療福祉大学大学院教授
1974年新潟大学医学部卒業、国立横浜病院にて外科医師として勤務。同病院在籍中86~88年までニューヨーク州立大学家庭医療学科に留学。94年国立医療・病院管理研究所医療政策部長。95年国立長野病院副院長。2006年より国際医療福祉大学三田病院副院長・国際医療福祉大学大学院教授、国際医療福祉総合研究所長。政府委員等 医療計画見直し等検討会座長(厚労省)、介護サービス質の評価のあり方に係わる検討委員会委員長(厚労省)、「どこでもMY病院」レセプト活用分科会座長(内閣府)、中医協調査専門組織・入院医療等の調査・評価分科会座長
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