人間の仕事をロボットが代替
数年前より金融・製造業などで普及が進んでいるRPA。一度は耳にしたことのある方も多いのではないだろうか。2017年には大手銀行が年間で業務時間を数千~数万時間削減し、人員削減を万単位で進めると発表し話題となった。このRPAという技術は一体どのようなものなのか、どのような業務に向いているのか、今後介護業界でも取り入れられていくのか……基礎的な知識や導入事例を紹介する。
RPAとは何か、AIとの違いは
RPA(Robotic ProcessAutomation/ロボティック・プロセス・オートメーション)とは、パソコン上の業務をRPAソフトに覚えさせることで、パソコンを使った業務を代行・自動化できる概念のこと。『パソコンでの業務を自動でこなしてくれるロボット』ととらえるとわかりやすいだろう。
RPAと混同されがちなAI(Artificial Intelligence/アーティフィシャル・インテリジェンス)は、人間の代わりに判断することができる「人工知能」をいう。AIそのものを使用することはほとんどなく、システムに膨大なデータを学習させたAIを組み込むことによって、人間と同じように、人間以上の精度で、物事を判断できるというものだ。RPAにAIを組み込んでさらなる効率化を図るケースも存在するが、数は多くないのでここでは割愛する。
「RPA」という言葉は「Word」「Excel」のように個別のソフトウェアの名前を示しているのではなく、業務をこなすソフトウェアの分類である。日本国内でよく使われているRPAソフトは、NTTデータの「WinActor」、UiPathの「UiPath」、RPAテクノロジーズの「BizRobo!」の3種類。その他にも様々なRPAソフトが各社から販売されている。
RPAを導入するにはRPAソフトを購入するだけでは不十分で、ロボットに業務手順を教える作業(シナリオ作り)が必要となる。シナリオ作りはある程度ITの知識がある人ならば問題なく行えるが、そうでない人には少々ハードルが高いものととらえられる場合が多い。そのためRPAソフトを販売する各社はシナリオ作成研修を開催したり、シナリオ作成者のためのQ&Aサイトを設けたりして、RPAの普及に注力している。
業務向き不向き、特性で切り分け
では、業務効率化化を行うのに向いている業務は何だろうか。向いている業務の例を挙げる。
①ある程度単純かつ回数の多い業務
単純かつ回数の多い業務はロボットの得意分野。人間であればミスの発生しがちな単純で回数の多い業務も正確にこなすことができる。また、24時間365日稼働する。
例:会計ソフトから表計算ソフトなどへの転記作業
②判断基準が決まっている業務
RPAは人間のように臨機応変な対応ができない。あらかじめ用意された作業手順しかとることができないため、判断基準が明確になっている業務であればスムーズに進めることができる。逆に、マニュアル化できないような業務や、状況によって複雑に変化する業務はシナリオ作りが難しく、安定して動かしづらい側面があるのでRPAには向いていない。
例:介護記録と報酬請求の突合作業、マニュアル化ができる作業
③高い頻度で行われる業務
RPAを導入する際、ロボットに業務を教える作業が必要になる。こまごまとした業務手順を数多く用意するのはシナリオ作りなどの事前準備にかかる労力が業務ごとに発生する。それを鑑みると、高い頻度で行われる業務から先に導入をする方がより多くの時間を削減できる。
ここまでRPAのメリットを紹介したが、一方で課題点もある。介護事業者に向けてRPAなどを活用した業務効率化サービスを提供しているVLeライナック(東京都豊島区)の高橋貢会長は「RPAはツールだけで効果が得られるような魔法の杖ではない」とRPAに過度な期待を寄せることに注意を促す。
「年間数万時間もの業務削減といった事例が注目を集める一方、本番運用に至らない事例も増えている。まずは現場の現状把握と理解が大切」と語る。
RPAは現場自ら自動化を推進可能なため、業務見直し視点の不足や部分最適化はリスクとなり得る。
また、導入に関しても「シナリオ作成〜実行〜メンテナンス〜改善といった要素が必要だが、業務の片手間では難しいという声が多く聞かれる。例えばシナリオ作成には、ある程度以上ITを知る職員が一日数時間集中できる環境作りが望まれる。経営者が生産性向上に本気で取り組み、必要な資源を投下できるかが、RPA導入成否を分ける。業務見直しから相談できるパートナー選定が重要」と述べた。
他産業では導入が進んでいるRPAであるが、誰も管理する人のいない「野良ロボット」の発生や、使用するシステムのレイアウト変更などが起き、RPAソフトがエラーを起こすなど、課題もある。導入の際は他産業の事例を把握し、しっかりとメリット・デメリットを認識しておきたい。
本稿では社名を出して紹介することができなかったが、RPAを使用して業務効率化を図る介護事業者は少ないながらも存在する。2020年は「介護RPA元年」となるのだろうか。今後の動きに引き続き注目したい。
PC上の作業を自動化
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