創設9年で25万戸超に
国土交通省は「住生活基本計画(全国計画)」の改定に向け、議論を本格的に進め始めている。論点の1つは高齢者の住まいで、サービス付き高齢者向け住宅も改めて注目を集める。制度導入から10年目、整備数が全国25万戸を突破する一方、入居者の加齢化や要介護度の高まりなどの課題が浮上。新たなあり方が問われている。
次期改定で高齢者の住まいに関して国交省は、従来からのバリアフリー化率向上などに加え、「地域に見守られ安心して健康に暮らせる住まいの実現のため、医療・福祉・介護との連携も含めた取り組み」を重要な目標に位置付けている。
1月16日に国交省で開かれた会合は、高齢者の住まいを主要議題の1つとし、日本社会事業大学専門職大学院の井上由紀子教授が現状報告と提言を行い、サ高住についても取り上げられた。国交省は最新の統計値を公表。19年12月末時点でサ高住の登録数が25万352戸になったことを説明。特別養護老人ホームや有料老人ホームと並んで高い増加率になっていることが分かった(表参照)。
サ高住の制度は11年度に導入され、20年度で10年目を迎える。スタート直後の12年時点の登録数は7万999戸で、この間に3倍以上に増え、急速な広がりを見せている。
高齢者の住まいとして急速に普及した一方、新たな課題も生じている。1月29日に都内で開かれた「サービス付き高齢者向け住宅に関する懇談会」では、サ高住の現状に関する各種の研究報告とともに今後の課題点が議論された。
サ高住の立地特性に関する調査に取り組む京都大学大学院工学研究科の三浦研教授は、東京や大阪などの大都市圏におけるサ高住について、施設の地理的分布と入居者の要介護度の相関性を説明。都心部に近い施設ほど要介護度が低い傾向があったと指摘した。また、都心部の施設では訪問介護、地方ではデイサービスを併設するケースが多いとの傾向を報告している。
“自立”“看取り”ニーズも
制度創設当初にできたサ高住では、居住者の加齢や要介護度の高まりも今後課題になると見られる。厚生労働省から懇談会に出席した老健局高齢者支援課の齋藤良太課長は「85歳以上人口急増の受け皿として、サ高住は介護利用を見越したもの。看取りに関しても、介護サービスと連携してどのように対応していくかが重要だ」と述べた。事業者側からも「最期までケアする流れをつくっていきたい」(ニチイケアパレス常務取締役北村俊幸委員)などの意見も出た。
懇談会の座長を務めた一般社団法人高齢者住宅協会顧問の髙橋紘士氏は「これから到来する『超高齢多死社会』において、サ高住を作ったことの意味が問い直される」と述べ、さらにサ高住も、「自立型」や看取りまで行う「特養代替型」など多様化が進む可能性を指摘した。
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