クラウド型介護システムのカナミックネットワーク(東京都渋谷区)は、1月より人材紹介サービス・給与前払いサービスの提供を開始した。サービスの狙いについて山本拓真社長に話を聞いた。
──新事業を始めた経緯は
山本 当社システムのユーザーは介護・医療が中心ですが、人材不足は深刻な状況です。ある調査によれば、採用が困難だと感じている事業者は9割近く。採用難に加え、離職者の65・2%は3年以内に離職しているというデータもあります。こうした状況下では、事業者はどうしても人材紹介・派遣に頼らざるを得ず、高額・頻回な手数料支払いが経営を圧迫しています。これを解決したいと考えました。
──人材紹介会社は多く、特徴も出しにくい
山本 新たに専門部署を立ち上げました。当社は医療・介護経営を支援するクラウドサービスが主力であり、一般的な人材紹介会社に比べ医療・介護に対する知見があります。医療・介護事業の種別から仕事内容までを熟知しており、マッチングの質も高いものになります。対象職種は、医療・介護・保育で、当面は首都圏での展開を予定しています。
また、当社は人材紹介事業で大きな収益を上げることを目指しておらず、相場より大幅に低い手数料率でサービス提供が可能です。事業者は採用コストを圧縮し、定着率を高めることで経営を安定させる。その上でシステムを長期に利用してもらいたいと考えています。
──どのように定着率を高めるのか
山本 当社が調査した結果、派遣社員などで働く人の中には相当数の給与前払いニーズがあることがわかっています。派遣社員などで長い期間、日払い・週払いで過ごしてきて貯蓄も少ない人にとっては、転職後の最初の給与までの時間を延ばすことが難しい。実はこれが正社員への道を閉ざしている大きな要因でもあるのです。転職を繰り返さず、できれば安定して働きたいと考える人が多くいるにも関わらずです。
そこでそのタイムラグを解消するために、給与前払いを雇用主の事業者に代わって当社が実行します。事業者は給与前払いサービスに関する多少の利用料負担はありますが、煩雑な事務負担なく導入可能です。
──費用は
山本 詳細は非公開ですが、このサービスの肝は「人材紹介」と「給与前払い」のサービスをセットで利用できることです。
例えば、正社員を採用した場合、「人材紹介料」「給与前払いサービス手数料」を足したとしても、一般的な紹介会社の紹介料と比べて相当低いコストとなります。
当社は働く人を転職させて収益を得るビジネスモデルは考えていません。事業者に紹介した人が、給与前払いサービスを利用し続けながら長く働いてもらわなければ、当社としての利益は少なくなる仕組みとなっています。つまり、定着させるという事業者側と同じ目標を前提とするビジネスになります。ただ、給与前払いサービスも、安定して働き続ければそう長い期間利用することもないので事業者は安心です。
不安定な就業環境にある人たちが介護職の正社員として長く働くことができれば、それは業界にとっても非常に良いことです。
大きな負担となっていた採用コストを削減し事業者の経営が安定することは、長期的な視点で考えれば業務支援システムを提供している当社にとってもプラスであると考えています。
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