スポンサーリンク

 

 

 

「支援される力」大切

 

 昨年10月12日から13日にかけて日本列島に甚大な被害をもたらした台風19号。特に福島県は人的被害が一番大きく、NPO法人豊心会の施設がある須賀川市にも自然災害の深い爪痕を残した。氾濫した釈迦堂川に近いグループホームすずらん日向の被災から復旧までを振り返る。

 

 

■台風前日~避難まで

過去最強クラスの豪雨と暴風の予報を受けて須賀川市内で複数事業所を持つ豊心会では10月11日、避難指示が出た際の対応確認について、本部から職員にメールが送られた。

 

12日午後、雨や風がさらに強くなり、各デイサービス事業所の管理者は送迎時間を早める指示が出された。釈迦堂川から数百メートルに立地するグループホームすずらん日向では、通常通り18時に夕食を開始していたが、19時には釈迦堂川の水位が避難判断水位(水位危険度レベル3)に近づき、19時半には氾濫危険水位(水位危険度レベル4)を超えたため、避難判断が下された。介護度の高い高齢者を優先的に市内にある同法人のデイサービス、グループホームへと入居者を避難させ、21時には18人全員の避難が完了した。

 

 

今野秀吉理事長は当時の様子について、「避難を想定して事前に避難担当職員と連絡を取り合い、段取りなどについて確認していたため、大きな混乱はなかった」と話す。

災害対策委員会が指揮(左:今野秀吉理事長)

 

 

■台風通過後~復旧まで

台風が通過した翌朝13日、すずらん日向を訪れた橋本正明管理者は施設を見て、「途方に暮れた」という。くるぶし付近まで浸水していたため、その日は休日出勤を含め、約30名の法人職員が室内の水拭きや避難先の入居者の対応にあたった。14日には復旧支援を行うために県外から「災害支援法人ネットワーク」のメンバー約20名が駆けつけた。

 

 

災害支援法人ネットワークとは通称「おせっかいネット」という任意団体の全国ネットワークで、約20法人が参画している。年に2回、参画法人の施設で勉強会や施設見学を行うほか、アクティビティを通じて懇親も深めるという。

 

 

近隣の介護事業所は、復旧するまでに数ヵ月かかったり、廃業を余儀なくされたりしたケースも少なくないが、すずらん日向は気の知れた仲間の支援により、復旧の見通しが立ち、避難者のグループホームへの帰宅日を17日に目標設定した。「災害が起こると、地域住民は被災者になるため、県外の広域ネットワークの重要性を痛感した」(今野理事長)

 

17日午後、予定通り避難者は住み慣れたすずらん日向に帰宅。夕食時には寿司パーティーで帰宅を祝った。

 

 

おせっかいネットのメンバーは、その後も立ち替わり入れ替わりで現場を訪問。施設の片付けに目途が立つと、被災した職員宅の清掃も手伝ってくれた。復旧作業で職員の疲れが出始めた頃には、夜勤のケアサポートにも入ってくれたという。

 

 

「もし、おせっかいネットの支援がなければ、10月末まで復旧できなかっただろう。『支援される力』を持つことが早い復旧に繋がる。『何かお手伝いしますか』といった声掛けに甘えること、そして何に困っているのかを明確に発信することが大切である」

 

 

避難経路マニュアル化

 

賠償保険等の見直しも

東日本大震災以降、災害対策委員会によって災害対策を強化してきた豊心会だが、新たな課題も見つかった。台風当日、業務を終えた職員が車で帰宅中に流されてしまったのだ。大事にはいたらなかったものの、今野理事長は「明らかに川が氾濫するとわかっていても、回り道をせずいつも通りの道を通ってしまう。避難経路とあわせて職員の帰宅経路もマニュアル化すべきだった」と振り返る。

 

 

今回の災害で電気自動車や給水ポンプ、こたつなどの設備が破損し、被害総額でいうと1000万円ほど。国から補助金が給付されるが、その対象は設備関連。対象とならない災害用備蓄品の再調達費は、あいおいニッセイ同和損保の「緊急費用補償特約」でカバーされる見込みだ。

 

 

「近年、自然災害が頻繁に発生していることを受け、水害に関する補償をカバーできる賠償保険に加入しておいてよかった。被災の可能性が高い介護事業所は、損害保険の見直しも重要である」

 

 

 

この記事は有料会員記事です。
スポンサーリンク

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

Twitterでフォローしよう