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<連載第105回 改正民法後の賃料減額について>

減額割合の規定が肝要に

4月1日から改正民法が施行されました。今回は、この改正民法で大きく変更された賃料減額について解説していきます。

 

まず、旧民法では、賃借人の過失によらずして賃借物の一部が滅失したとき、賃借人は、その滅失した部分の割合に応じて、賃料の減額を請求することが「できる」と規定されていました。これが改正民法では、賃料はその使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額「される」となっています。

 

すなわち、これまでは、借主から貸主に対して、賃料の減額を請求することとなっていましたが、改正後は、賃料が当然に減額されるとして、より借主の保護が強い内容となりました。なお、「滅失」とは、設備不備等で賃借物の使用収益をすることができなくなった場合も含むとされていましたが、改正民法では、法文上で明文化されています。

 

 

では、当然に減額される金額とはいくらなのかというと、残念ながらそこまでは改正民法に規定がされていません。これまでの実務上、賃料の減額割合については、判例等の蓄積による明確な基準がないことから、賃貸人と賃借人が協議して、減額割合を決定していました。そして、具体的な減額割合は、日本賃貸住宅管理協会による賃料減額のガイドラインが参考となります。

 

 

当該ガイドラインによれば、例えば、トイレが使えない場合の減額割合は月額賃料の30%、お風呂が使えない場合は10%などと減額割合が示されています。更に、状況別に免責日数も示されており、トイレが使えない場合は1日、お風呂が使えない場合は3日などと定められています。この免責日数とは、修繕までに多少の日数がかかることを考慮し、賃料減額対象の日数から控除することが妥当な日数を表しています。

 

 

もっとも、賃貸している物件において設備不備等が発生し、その都度賃貸人と賃借人で協議をして減額割合を決めていたのでは、減額割合の合意までに時間を要することも往々にして起こり得ます。
そこで、賃貸借契約を締結する際に、例えば、特約条項や別紙条件等を加えるなどして賃貸借契約書の中に、それぞれの設備不備ごとに減額割合を規定し、合意しておくことが望ましいものと考えます。
今後はこのように賃料減額のトラブル予防対策を行っておきましょう。

 

 

 

 

弁護士法人ALG&Associates

執行役員・弁護士 家永 勲氏

【プロフィール】
不動産、企業法務関連の法律業務、財産管理、相続をはじめとする介護事業、高齢者関連法務が得意分野。
介護業界、不動産業界でのトラブル対応とその予防策についてセミナーや執筆も多数。

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