マスクは自分の飛沫を広げたり他者からの飛沫を吸い込んだりするのを防ぐ役割とともに、ウイルスが付着した自分の手を、鼻や口に直接触れさせない役割もあり、感染予防に欠かせない。
2月初旬に「本日、マスクの入荷はありません」と店頭に掲示する店が現れ、その後新型コロナウイルス感染拡大と比例しその掲示も拡大。5月中旬までその状態が続いた。初期段階では入荷する店も多少あり、そこには朝から長蛇の列ができ、ニュースでも度々報道された。
そこで、発想の転換をする人たちも現れた。使い捨てマスクの前は、何度も洗って使える布マスクだった。布製であれば手作りもできる。布マスクの型紙を掲載する雑誌やサイトが登場しはじめた。休校中にマスク不足の現状を知り、家で500枚もマスクを手作りし、喫緊にマスクが必要な高齢者施設に寄付する小学生も現れ、マスメディアで紹介された。
そんな中、ウイルス感染が日本より拡大しているアメリカの学生の、ある試みがネットで紹介された。手作りマスクを作るまでは、日本の小学生と同じだが、1つ違うのは布マスクの中央を長方形に切り取り、そこに透明なシートを縫い込んであること。その記事の見出しには、「耳の不自由な人のためのマスクを作る学生」とあった。
報道番組などにおいて手話通訳の姿を見ると、マスクをしていないことがわかる。手の動きと共に口の形も聴覚障害者にとっては重要な情報であるためだが、それでは感染の危険が残る。
そこで考案されたのが、先のようなマスクだ。今では、口の形が分かり、感染も防ぐ役目を果たす各種フェイスシールドも出始めている。緊急事態が宣言される中、多様な人々を守る貴重な工夫が生まれている。
星川 安之氏(ほしかわ やすゆき)
公益財団法人共用品推進機構 専務理事
年齢の高低、障害の有無に関わらず、より多くの人が使える製品・サービスを、「共用品・共用サービス」と名付け、その普及活動を、玩具からはじめ、多くの業界並びに海外にも普及活動を行っている。著書に「共用品という思想」岩波書店 後藤芳一・星川安之共著他多数
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