政府は5月25日に緊急事態宣言を解除、6月19日には都道府県をまたぐ移動の自粛を緩和する方針も出された。しかし、都内の感染者数は40名を超える日が続き、第2波の到来も予想されていることから、次に備えるための行動を起こす必要があると言える。本紙では、実際にクラスターが発生してしまった都内施設、対策の先頭に立った業界の有識者に取材を実施。当時の対応や今後の備えのポイントについて話を聞いた。
クラスター発生、業務負担が課題
「当時、できることは全てやっていた」社会福祉法人池上長寿園(東京都大田区)が運営する特別養護老人ホームたまがわ(同)の職員は怒涛の日々を振り返る。
対策費用1700万円が発生
同施設では4月1日に1人の職員が新型コロナに感染して以降、4日には12人が感染者となりクラスターが発生。1人目の感染発覚後、濃厚接触者・感染経路を明確にするため、職員・入居者の動きを2週間程度まで遡り、詳細に調べ上げる必要があった。
感染発覚後、マスクや防護服、消毒液などの購入、保健所の指導によるゾーニングの実施といった作業に追われる日々が続いた。それらの費用負担は法人全体で1700万円に上った。
現場で苦慮したのは、陽性の入居者を介助する職員の負担。二次感染のリスクがある中、施設内での隔離やゾーニング、徹底した消毒など感染拡大防止に留意した。医療資材不足も深刻で、それすら心労につながった。
感染者発生を発表した後は報道への対応にも追われ、また偏見などから、施設や職員にも中傷があり、職員の心理マネジメントも並行して進めた。
利用者に陽性者、職員応援で対策
新型コロナに対し、現場ではいかに備えるべきか。一般社団法人全国介護事業者連盟(東京都千代田区・以下介事連)の斉藤正行専務理事は本紙にて以前伝えたように、「地域連携体制の構築が急務」と語る。
感染者発生時、ケア継続体制を整えるには、地域の事業者間で職員や物資の融通が必須となるため、情報共有、連携体制構築を今から行うべきだとした。
斉藤専務理事は、感染者発生時、職員の融通をスムーズにするために、少なくとも
▽法人間の事前合意
▽職員への事前合意
▽出向契約書の締結
――の3点を取りまとめる必要があるとした。
介事連では、介護事業所において新型コロナが発生した場合の、相互支援スキームへの参画表明書をホームページで公開し、登録申請を受け付けており、積極参加を訴える。
また、感染リスクを回避するため、現場では「新しい介護様式」の確立が必須となる。介事連ではそのガイドライン策定に向けて動いているという。介護では3密回避は業務の特性上難しいため、その状態を踏まえた上でいかに感染リスクを低くするかを示す方針だ。「新型コロナ対策のかかり増し費用の助成については、既に2020年度第2次補正予算案で組まれている。これらの支援も同時に活用しつつ、今の内に万全の状態にしてもらいたい」(斉藤専務理事)
信頼できる連携体制を確立することで、現場の混乱は回避できる。第2波への備えは「地域連携」が鍵となりそうだ。
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