介護付有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅を首都圏中心に展開するニチイ学館のグループ会社、ニチイケアパレス(東京都千代田区)。秋山幸男社長は2年前の就任以降、現場職員との密なコミュニケーションを通じて生産性の向上に取り組み人員配置の変更などで効果を上げている。
── 就任されて2年間、どのようなことを心がけてきましたか。
秋山 現場に出向き、コミュニケーションを積極的に図ってきました。昨年は、前期に全てのホームを視察して、施設長、チーフ、サブチーフとの意見交換を重ね、現場の課題を吸い上げられるよう、職員と対話できる環境を築いてきました。後期には、チーフ以上の職員を本社に集めて研修を実施しました。
── 課題に感じていることは何でしょうか。
秋山 生産性の向上と人材の確保の2点だと考えています。前者については現在、夜間の人員配置の見直しに取り組んでいます。パイロット運用として、3つのホームで実施して、元の配置が4人なら3人に、3人なら2人に減らすことができました。
取り組みを始めた当時、現場からは「入居者に十分目が行き届かなくなることで、転倒リスクが増えるのではないか」と心配する声がありました。しかし、私自身は当社のサービスの本質はそうしたところにあるのではないと考えています。
そこで「転倒しないようにするために必要なこと」を考えるよう促しました。一人ひとりに合わせたリハビリテーションや栄養指導などに時間を割くことが入居者の自立支援を促し、結果として「転倒しないような状態」を作り上げていくことが重要です。現場との対話の中でこうした考え方を共有してきました。
── 労働環境改善にも繋がりますね。
秋山 家庭と仕事の両立を考えると夜勤は負担が重いものです。また、日中の配置を手厚くしたことで、職員から「有給休暇が取得しやすくなった」という声も挙がっています。8~9時間あった職員1人あたりの残業時間も、3時間程度まで減っています。更に今後、人員配置の見直しをするホームを広げていきます。
── 人材の確保に関する取り組みはなにか工夫をしていますか。
秋山 昨年11月よりキャリアプラン構築の支援策として、介護福祉士、喀痰吸引等行為研修の修了者、認知症ケア専門士、介護予防運動指導員の4つの資格取得を推奨し、手当の増額などを実施しています。
今年の1月から、離職した職員に「また、当社で一緒に働かないか」と声かけも始めました。効果分析はこれからですが、離職した後に他社で働いた経験のある元職員達が「当社の環境は良かった。また戻って働きたい」と答えてくれることもあり、手応えを感じています。
── 介護付有料老人ホームの役割についてどのように考えていますか。
秋山 最近は、長期入院が難しく、家族が考えているよりも早く退院せざるを得なくなるケースが少なくありません。しかし、医療機関には介護付有料老人ホームの看取り体制が十分認識されていません。対策として、当社では病院の退院前カンファレンスにホームの管理者が参加し、受け入れ態勢を説明しています。こうした活動の積み重ねが世間からの信頼に繋がっていくと感じています。
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