東名阪中心に〝トータルケア〟目指す
M&Aにより介護事業を拡大しているソラスト(東京都港区)。サービスに偏りのない「地域トータルケアサービス」を目指す同社は、2030年には全社売上規模3000億円、介護事業で1500億円を掲げている。同社の戦略やICT活用、人材確保の取り組みなどについて、福嶋茂専務に介護事業の戦略を聞いた。
――20年3月期決算では7期連続の増収増益となり、M&Aにより大分にも初進出されました
福嶋 当社は「地域トータルケアサービス」を掲げ、全国の各自治体に在宅系、施設系偏りなくすべてのサービス拠点を設けていきたいと考えています。現状は東名阪エリアが中心ですが、ご縁があれば、他エリアでも積極的にM&Aを進めています。19年度は、2月に大分県で利用者数トップの恵の会の株式を取得し、大分に初進出しました。17年にも、愛媛県で在宅利用者数トップのベストケアを子会社化しています。M&Aは毎年10件ほど行っており、19年度は8件、売上寄与額では42億円でした。
――M&A戦略について聞かせてください
福嶋 現状でサービス拠点を持っているのが約100エリア。これを2030年には300エリアに拡大、売上規模は現状の4~5倍となる1500億円を目標にしています。現在は約100エリアに約480事業所を展開していますが、300エリアに拡大するとサービス数が格段に増加し、各地域の当社のシェアが高まります。なお、エリア内で在宅系、施設系を揃えることについては、30年の達成率を100%とした場合、現在は12%。残りはどちらかに偏りがあるので、不足しているサービスを補完していく形で拡大します。M&Aによるスピーディな拡大が主ですが、昨年4月には筆頭株主でもある大東建託とともにサ高住を新設しました。
サービス内容については、元の会社ごとに方針にばらつきがあることがM&Aの特徴。そうした中でも、当社では中重度、とりわけ認知症ケアに重点を置いているということは伝えています。
――稼働率や入居率を教えてください
福嶋 M&A以前には紹介会社からの紹介を待っていたような会社も、病院やケアマネに対する営業を強化して稼働率を上げてきました。在宅拠点の稼働率はばらつきがありますが、入居系施設の平均入居率は6月末時点で97%。あとはいかに入院日数を減らし、稼働率を上げていくかだと考えています。
――コロナ禍での影響はありましたか
福嶋 デイサービスは2割近くの利用控えが起きましたが、現在は3月以前の状態に戻りました。ショートステイのみ完全には戻り切っていません。また、M&Aを進めることにも影響はあり、先方と対面で話を聞くことなどの難しさは続いています。
ICT、海外人材活用にも力
――ICT活用については
福嶋 在宅系ではすべての介護記録を電子化しています。施設系にも導入中で、請求・経理などの処理もできるシステムとして全面的に電子化する予定です。グループ会社にも統一のシステムを順次導入していきます。数年のうちに全拠点を網羅する予定ですが、新しい開発とアップデートを繰り返し、よりよいシステムを目指していく方針です。また、人事制度にも活用しており、介護の従業員約6000人、当社全体では約3万人のデータベースを構築し、人事データや評価、処遇、事務所ごとの労務管理も一括して電子化しています。
――人材採用については
福嶋 もちろんM&Aのメリットはありますが、会社が変わることに対するスタッフの不安や定着、事故発生やコンプライアンス面に対するフォローに最も注力しています。豊富な研修に加え、担当のエリアマネージャーとのミーティングやコミュニケーションを大切にしています。全国20に分けた各エリアに40人超のエリアマネージャーがいます。
新卒採用は、毎年20~30名採用しており、彼らはエリアマネージャー候補として、いくつかのサービス種別を経験してもらいながら育てています。また、海外人材については、今年も技能実習生として2期生をベトナムから受け入れ、9名を採用しました。他スタッフや利用者からの評判も良いので、今後はベトナムに限らず東南アジアを中心に受け入れを拡大していく考えです。
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