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---社会福祉法人愛の会 法人本部長兼統括施設長 木村哲之氏---

 

□1例目となる職員の早期発見の重要性

 

当施設で1例目となった職員は、6月25日に体調不良(微熱)を感じて受診し、医師から「様子をみる」と言われ、28日に再受診するまで欠勤しました。7月1日に2例目と確認された職員は、24日以前の勤務の中で感染していたと思われますが、もし1例目の職員が25日時点でPCR検査を受けることができていれば、26日には2例目を確認することができ、3例目以降の感染拡大を防ぐことが可能だったのではないかと考えてしまいます。

 

 

 

 

□「全員検査」の難しさ

 

松戸保健所の指導下で、6月30日以降、検査を実施してもらいましたが、行政検査は感染の確認された方との濃厚接触者(及び接触者)の範囲にとどまり、全員に対する検査を強く要望しても断られました。保健所(千葉県)の担当者の見解は「これまでの多くの経験から、判断の正確さには自負があります」とのことでした。しかし、検査を行わないことで、現場では次のような弊害が起きました。

 

 

①職員や利用者、ご家族は「検査の対象とならない=感染していない」という認識にはならない。職員は自身の感染の不安を抱えながら業務にあたり、日々強い精神的ストレスに苛まれて疲弊してしまう

②そのため、常に最大限の感染防止対策を講じることを余儀なくされ、ガウン等の防護用品の消費が激しく物品不足に陥る

③職員の家族の中には「同居家族に感染疑いがある」ために、会社(自衛隊や介護施設など)に勤務できない人も生じた

④家族への感染拡大の不安から、車中泊、民間宿泊施設などを利用して自宅に帰れない職員がいた

 

厚生労働省などの働きかけもあり、最終的には松戸市の全額負担で、利用者・職員全員にPCR検査を実施していただけました。なお、全員に対するPCR検査の結果は、保健所の担当者の見立てどおりで当初の行政検査の「範囲外」の人からは陽性者は発見されませんでした。保健所の指導や考え方は信頼できるものです。

 

 

 

超党派介護議員連盟、各介護業界団体からの強い要望もあり、国の考え方も変わってきています。「分からない」「検査を受けていない」という状態には大きな弊害もありますが、検査の精度も100%ではなく過信も禁物です。こうしたジレンマをどう乗り越えるか、PCR検査の悩ましい課題の1つです。

 

 

□即時入院措置

 

7月1日の午後6時前に感染が確認された、3例目となるご入居者については、翌2日の午後1時30分まで施設内に滞在せざるを得ませんでした。その夜、私たちもあきらめきれず独自のルートで入院先を午後11時過ぎまで探しましたが、最終的に「保健所の指示が必要」とのことで断念し、夜勤職員を1名増員して対応しました。

 

5日後の6日に感染が確認された4例目のご入居者が、1日の時点では陰性だったことを考えると、2日まで滞在した3例目から感染した可能性が高いと思われます。

医療の機能を持たない特養など介護施設においては、感染拡大防止と感染者自身の安全のために即日入院が必要と思いますが、受け入れ先がすぐに見つかるかという課題があります。

 

 

 

□嘱託医の「自宅待機」

 

鼻腔からのPCR検査は医師しか行えず、施設内での検査は当施設の嘱託医が基本的に行うことになりました。しかし、初日の検査対応を担当した嘱託医が、勤務先の病院から「感染者に接触したので自宅待機するように」との業務命令を受けてしまい、その後は様々なルートで医師を都度手配しました。手配、医師の往診料などは当施設が全て負担しました。

 

 

老健の場合は、基本的には医師である施設長が担うケースが多いと思いますが、特養や介護付有料老人ホームなどの場合、契約する嘱託医と事前に緊急時の対応を協議しておく必要があります。医師の配置のないケアハウス、グループホームなども「誰が行うのか」を事前に確認しておくべきです。

その後、唾液検体検査も認められ、家庭や施設においては介護士などが採取できるようになりましたが、医療機関との連携は欠かせません。

 

 

 

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