ウエルビー(東京都渋谷区)は8月22日、都内で「地域包括ケアがもたらす大変革を乗り切るイノベーションとは」と題したセミナーを開催した。同社の青木正人社長が講演。医療・介護周辺サービスや生活支援型サービスの供給促進がカギになることを解説。介護予防分野で注目を集めるソーシャルインパクトボンド(SIB)の活用についても紹介した。
東京商工リサーチによれば今年1月から4月までの老人福祉・介護事業者の倒産件数は31件。前年同期比約63%増となったが、負債総額は34億3300万円で同21・3%増にとどまった。「統計に現れない零細事業者の破たんを含め、小規模事業者の倒産が多くなっている」(青木社長)ことを示した。
これが今年4月の介護報酬改定の影響によるものかという見方に関して、全国老人福祉施設協議会が公表した特別養護老人ホームの改定前と改定後の請求額を比較。介護職員処遇改善加算を除いた額はマイナス3・54%となったものの最大値が7・68%、最小値がマイナス13・94%であることに着目。「零細・中小事業者の経営基盤は報酬改定に関わらず、既に揺らいでいることが分かる」と見解を示した。
内閣が作成した「経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)2015」をもとに財政健全化と社会保障の行方を考察。政治状況を踏まえたうえで、医療・介護提供体制の適正化、インセンティブ改革による生活習慣病の予防・介護予防について言及。
現状では都道府県別一人当たり医療費は、最小の千葉県と最大の高知県で格差が1・5倍超あるが、その格差を半減した場合、医療給付費はマイナス2・16兆円。また健康ポイント制度の導入と自助努力により、医療費・介護費を抑制する仕組みを紹介。「国民の健康増進により要介護認定率や一人当たり給付費などの地域差を保険料水準に反映する仕組みを構築すべき」とした。
経済産業省の「アクションプラン2015」で示された介護システムを補完・充実する保険外サービスの創出を踏まえ、公的サービスの産業化の促進を提言。医療・介護保険給付サービスに密接した人間ドック、認知症予防教室、リハビリ支援、健康・食事指導などの周辺サービスの供給促進、さらには移送、在宅向けリネン、成年後見人、フィットネス・スポーツ教室、介護旅行、見守り、買い物支援などの生活支援サービスの拡大が不可欠であることを示した。
また経済進化のマトリックスを例にヘルスケア4・0を提言。少子高齢化の進展、医療モデルから生活モデルといったケア観の変化などを要因とする介護保険制度の限界を打破するために、「サービスや組織のイノベーションによる地域包括ケアの構築で社会保障の持続可能性を探っていくべき」とした。
後半では団塊ジュニアが高齢化を前提とした「保健医療2035」による、量の拡大から質の改善、患者中心、キュアからケア、行政による規制から当事者による規律といった考え方を紹介した。
SIBについては、公文教育研究会の河村功介氏が世界でも初と言われる介護予防分野での取り組みを紹介。SIBはNPOなどの活動資金を投資家から調達し、社会問題の解決の成果に応じて政府が投資家に配当を支払う新たな投資手法。
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