2016年の東証一部再上場や積極的なM&Aなど近年活発な動きをみせるソラスト(東京都港区)。2年前に就任した石川泰彦社長は生産性向上が介護事業者の地位向上に向けて取り組むべき課題だと話す。
── 就任してこれまでの取り組みは。
石川 徹底的な業務や評価指標の「見える化」だ。どこに資源を集中させるのか、組織が取り組むべき目標や課題は何なのかを数字にして示すことを念頭に置いてきた。全社員が一丸となり「生産性の向上」を目指している。
そのためのポイントが人材育成だ。特にリーダーの育成が重要だと考えている。当社の柱は医療事務と介護。どちらも有資格者が働く職場だが、同じ資格を持っていても、生産性という尺度で見ると結果が違う。その差は組織のリーダーの違いにある。これまで優秀な拠点長がいてもそのノウハウが属人的になっており、社内で共有できていなかった。リーダー人材を階層、レベル別に分けて分析し、どのようなトレーニングが必要かを考え科学的に管理・育成する。
──リーダーが持つノウハウとはどのようなものか。
石川 例えば、ベテラン職員は、入職して1年未満の新入職員に対して「こういう発言が増えてきた」など辞めてしまう兆しを感じることができる。このような知識や経験を、面談記録を学習・解析するAIを活用して、新入社員の面談、フォローアップの仕組み化など、属人的なノウハウを横展開して社員の定着率を高める取り組みに繋げている。
── リーダー人材は、現場から育成しているのか、外部から適任者を採用しているのか。
石川 どちらも必要だと考え、実践している。但し年功序列のような考え方は排除して、適任者を配置している。特に今期はリーダー人材の採用を積極的に行っており、この数ヵ月で昨年1年間に採用した人数を上回った。
── 生産性という指標をあらゆる場面で取り入れ、外部からも役職者を積極的に取り入れる方法は一見ドライな手法にも思える。
石川 こうした考え方は、介護業界やそこで働く人材のためにこそ必要な視点だと考えている。介護に限らず、サービス業は、社員がやみくもに頑張ることで成り立ってきた。生産性という指標を取り入れることで彼らの努力を適切に評価し、還元したい。私たちがそうした考え方を示すことで、自分の仕事の価値を表現する手法を従業員にも身に着けてほしい。
── 介護事業では積極的なM&Aを打ち出している。
石川 業界再編の動きが活発化している今が業界内のリーダーとしてのポジションを目指すチャンスだ。業界の内外にリーダーとして認められるためには、会社の規模やそれなりの利益の確保が必要だ。まずは会社としての売上1000億円、そのうち介護を300億円にして売上比率のトップまで持っていきたい。
展開エリアは3大都市圏で将来的な人口増加が見込まれる地域。注力分野は在宅サービスと認知症ケアだが、規模の拡大を優先して当社の理念に共感してくれる相手であればあらゆる可能性を考慮する。
組織を拡大して発信力を高め、生産性・地位の向上を業界全体で目指すよう意識改革を促したい。
──過去には急な拡大で内部に歪みが生じた企業もあった。サービスの質はどう担保していくのか。
石川 買収先とは現状維持ではなく、発展していくためにパートナーシップを組んでいる。組織文化を共有・発展させて一緒のチームになれて良かったと互いに思えるような運営を目指す。
特に介護の仕事は「価値観の共有」が重要な要素。ここを丁寧にすり合わせていくことは生産性、サービスの質、離職率・満足度などの数字にも表れてくると考えている。
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