社会保障審議会介護給付費分科会で2018年改定に向けた議論が大詰めだ。
1日は訪問介護のうち、生活援助の在り方について議論。身体介護と切り分け、報酬を区別する案や、担い手育成のための初任者研修導入などが提案されているが慎重論も多い。自立支援推進の観点から、リハビリ専門職との連携についても強化される方針だ。
議論の中心になったのが、訪問介護のうち生活援助中心型サービスの人員基準・報酬について。人員基準を緩和して、報酬を引き下げることが提案されている。
また、生活援助サービスの担い手拡大策については、初期研修を新たに導入する方針。現在訪問介護員に求められている130時間以上の研修よりも短期間で、観察の視点や認知症に関する知識を盛り込む方向だ。これは、生活援助に必要な知識に特化したもので、既に来年度の導入が決まっている介護職の「入門的研修」とは異なるもの。厚労省からは研修修了者を常勤として換算することが提案されている。
これに対して斉藤秀樹委員(公益財団法人全国老人クラブ連合会常務理事)は「訪問介護の現場は、中高年の女性の力で維持されている。彼女たちが現場にいる間に担い手を育てていかなければならないが、報酬を下げたら人は集まらない」と懸念を示した。石本淳也委員(公益社団法人日本介護福祉士会会長)も「地域で総合事業を担う人材も育っていない。現場で活かせる研修をするためには時間も予算も必要」と続いた。石田委員は人員配置についての取り扱いについても「どれだけのスキルが身に着けられるかわからない段階で組み込むのは尚早」とした。
また、給付費を削減するため生活援助サービス利用時に課す上限も俎上にのっている。
集合住宅減算 要件厳格化も
伊藤彰久委員(日本労働組合総連合会総合政策局生活福祉局長)は「上限の給付額や回数などを一律に設定するのでは無く、月に100回など極端な回数を利用している場合もどのような状況なのか分析する必要があるのではないか」と指摘した。
「身体介護と生活援助は切り分けられない。生活援助しか許されていない人材が例えば排泄介助を頼まれたらどう対応するのか」、「これ以上複雑な制度になると利用者がますます混乱する」などの意見も出ている。
リハ職との連携要件緩和で推進
また、訪問介護においても自立支援、重度化防止の観点を取り入れるべきとして、リハビリ専門職との連携が推進される方針。現在は理学療法士がサービス提供責任者とともに利用者宅に訪問するか、それぞれが訪問してカンファレンスを行い、訪問介護計画を立てた場合、「生活機能向上連携加算」が取得できる。来年の改定では動画確認などを通じてリハビリ専門職や医師から助言を受けた場合でも可能にすることを提案。「遠隔で要介護者の映像を観るだけで本当に要介護者の適切なアセスメントができるのか。安易に『とれる加算』を設定していないか」(東憲太郎委員・公益社団法人全国老人保健施設協会会長)など一部の委員から慎重な意見が出た。
さらに集合住宅減算の対象範囲についても議論。現在は有老、サ高住、養護老人ホーム、軽費老人ホームに住んでいる入居者に対し、(1)訪問事業所と同一の敷地内、または隣接する敷地内にある建物で暮らす利用者にサービスを提供する場合、(2)(1)以外の範囲でも同一建物に入居する利用者が月20人以上いる場合、10%の減算になるが、これを一般の集合住宅にも広げ、人数ごとの減算額も見直す方針を示している。
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