サギサカ(愛知県豊田市)は、自転車本体および自転車部品のメーカー。2016年9月より、高齢者でも安心・安全に運転できる自転車「こげーる」を販売している。自転車販売店を通じての一般消費者へのアピールに加えて、卸会社を通じて介護事業者にも提案している。匂坂慎祐社長に商品の特徴などについて話を聞いた。
──高齢者向けの自転車を開発した経緯は。
匂坂 日本国内の自転車販売台数は1980年代後半に年間約1400万台でしたが、今は年間700万台にまで落ち込んでいます。1台当たりの単価は上がっていますので、売上が半分になったわけではありませんが、今後、市場は先細りになっていくことが考えられます。そこで新規事業として介護事業を始めることにしました。2014年に機能訓練型デイサービスのフランチャイズチェーン「LET,S倶楽部」に加盟し、現在埼玉県で2施設を運営しています。そこで利用者の機能訓練の様子を目にしたことがきっかけでした。
──機能訓練では機械を使って自転車をこぐような動きをすることが多いですね。
匂坂 自転車のペダルを踏む動きが機能訓練になるのであれば、高齢者が日頃から自転車に乗れば、機能訓練・介護予防につながると考えたのです。
これまでも、ほかの自転車メーカーが「高齢者用」と謳った自転車を開発していました。しかし、実際にはペダルの重さが一般の自転車と同じで、脚力がない高齢者にとっては運転がしにくいなど、中途半端なものになってしまっていました。そこで、高齢者が乗ることを想定した自転車を一から設計することにしました。
──実際に、どのような点が高齢者向けなのでしょうか。
匂坂 まずはペダルの軽さです。ギア比を一般の自転車と変えることで、通常の自転車より44%少ない力でこぎ始めることができます。その分、スタート時のふらつきが少なくなりますので転倒も少なくなります。 また、ペダルの長さは一般の自転車よりも短くしています。これによりペダルを1回転させる場合の足の動きは少なくて済みますので、膝の可動域が小さくなっている人でも運転できます。
次に、サドル後部に腰当てを付けました。姿勢が安定しますので、足に力が入りやすく、スムーズにペダルがこげます。
最後に、ペダル・チェーン部分とハンドル・前輪部分を繋ぐフレームを地上17センチの高さまで低くし、足を高く上げられない人でもまたぎやすいようにしました。また、フレームの上部は平らにし、足を置けるようになっていますので、一度でまたげない人は、足を乗せながらゆっくりと乗ることができます。
──実際にどういう用途を想定していますか。
匂坂 最近は高齢者が運転免許を返納する動きが強まっていますが、車が運転できなくなった後の移動手段がないことが問題になっています。しかし、自転車があれば外出もできますから不便ではなくなります。また観光地などのレンタサイクルで導入してもらえば、高齢者と若い人が一緒に自転車で観光を楽しめます。
──介護事業所にも提案しているそうですが。
匂坂 例えば、スタッフも自転車で付き添う形で近くの店に一緒に買い物に行ったり、自転車で外出するレクリエーションを行ったりして活用できると思います。
「要介護・要支援の高齢者が自転車を運転できるのか」と心配する人も多いですが、当社のデイ利用者でも「歩くときは杖が必要だが、自転車には乗れる」という人もいます。介護事業所などから「試乗したい」という声が寄せられますので、全国どこでも無料出張試乗会を行っています。
──価格は。
匂坂 1台税込み7万5384円です。また、昨年12月20日には車体をアルミ製にして一般自転車と同じ水準にまで軽量化したタイプも発売しました。こちらは税込み8万6184円です。
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