昨年4月、介護保険制度から自治体の介護予防・日常生活支援総合事業に移行した要支援1・2対象の訪問介護と通所介護。2月20日の衆院予算委員会にて、全国の250自治体で大手や地元介護事業者らが撤退の意向を示していることが1月時点の調査結果で明らかとなった。総合事業の停滞が懸念される。
250自治体で撤退増加
事業者、重度者対応へ
加藤勝信厚生労働相は20日の衆院予算委員会で、「自治体の総合事業において、『総合事業から撤退する事業所がある』と答えた市町村は250。撤退する場合、継続してサービスが利用できるよう、他事業者などとの調整義務が課せられているが、『調整を要する利用者がいる』と回答した市町村は約50ある」との調査結果を明らかにした。
自治体では、ボランティアで住民同士が助け合う仕組みづくりなどを行う一方で、入浴や運動機能の維持・改善、認知症ケアといった専門性の高いサービスについては、介護事業者などへ委託しているケースが多い。ただ、サービスによっては自治体の財政事情で報酬が移行前より20~25%程度、減収していた。
多くの介護事業者は、「昨年4月の移行時は、総合事業から撤退した事業者から利用者を引き継ぐことで顧客数が増加。収入減を数で補ってきた。しかし、今後の介護保険制度の方向性が明確になり、重度の要介護者向けに経営資源を集中せざるを得ない」と話す。ある自治体の担当者は、「報酬の安さを補うため、移行前と同じ水準にするサービスも設けたが、効果は乏しい」と頭を悩ます。
大手の撤退も相次いでいる。介護最大手のニチイ学館(東京都千代田区)は、全国約1400ヵ所のうち、約340ヵ所で総合事業から撤退するという。同社の関係筋によると「介護の担い手不足の中、自立支援・重度化防止などに経営をシフトする必要があると判断。自治体ごとに要件の異なる総合事業は、事業の標準化が難しいのも一因では」と話す。要支援者に対して、十分なサービスが提供できない可能性が出てきた。
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