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15の介護付きホーム(介護付有料老人ホーム)を運営するアズパートナーズ(東京都千代田区)は、介護業務の効率化を目指し、ICT/IoTを一体活用した「EGAO link(エガオ リンク)をメーカー4社と共同開発し、現在4施設に導入している。

──「EGAOlink」を開発した理由は。
植村 介護は本来、誇りを持てる仕事。しかし、慢性的な人材不足などにより、職員の業務負担が増し、「ケア」が単なる「作業」になってしまうケースも見受けられました。

そこで、2014年からケアと作業の分業に取り組み、多様なニーズの働き方を創出。パートタイマーの活用を促し、無資格でも活躍できるよう、勤務時間や給与を工夫し、夜勤人数の見直しを図りました。
次に取り組んだのが、ケアスタッフの業務効率化。昨年3月、メーカー4社と共同で開発した「EGAOlink」の導入を開始し、現在4ホームで活用しています。

──開発までの経緯は。
植村 ケアスタッフ、フロアリーダー、ナース、ケアマネなどの職域ごとに、最も業務負担となっていることを聞き取りした結果、やはり記録業務、夜勤の巡視などを負担と感じているスタッフが多いことがわかりました。より効果的な「チームケア」を行う上で、記録や入居者の状態把握などを1台の機器で管理し、職員同士がその情報を共有できる仕組みを構築する必要性を感じました。

このような思いを「記録(富士データシステム)」「ナースコール(アイホン)」「無線LAN(住友電設)」「睡眠(パラマウントベッド)」の4社と共有し、連携して開発したのが「EGAOlink」。スマートフォン1台で記録の作成から入居者の状態把握まで行えるようにしました。

──得られた成果は。
植村 スマホ1台で記録・コール・巡視が可能になり、記録業務が約7時間、巡視時間が約5時間、コール対応が約5時間削減でき、その結果、常勤2名を削減してもスタッフが安心して働ける職場環境を実現できました。これまでの3年間の取り組みで、サービスの質を向上させながら、常勤6名分の業務削減ができたことは大きな成果だと考えています。

創出時間でサービス向上
「ケア」と「作業」を分業
──サービス面の向上は。
植村 呼吸・睡眠状況がわかるシステムを連携させることで、覚醒・起き上がり・離床の動作をスマホでいつでも把握できるようになり、居室内での転倒は大幅に減少しました。また、リアルタイムで多職種間の情報共有を可能とすることで、正確で効率的な入居者のモニタリングが行えるようになり、申し送りやサービス、ケアプランの質・精度も向上できています。
さらに、業務効率の向上により創出した時間で、個別ケアの時間が取れるようになり、リハビリの質と量も向上。介護保険本来のケアプランが作成できたことも大きく、利用者の状態改善という本来の介護の仕事に専念できるようになりました。

──導入費用は。
植村 昨年3月、実証実験も兼ねて導入した「アズハイム町田(60床・東京都町田市)」の場合で、費用は約2000万円。人件費の削減効果は大きく、年間約1000万円のコスト削減につなげることができると考えており、投資費用は約2年間で回収できる見込みです。ランニングコストについては、各メーカーの選定機種によって保守に関する条件などが異なります。当ホームでは月額10万円以下となるように機器の選定をしました。10万円以下のランニングコストにこだわったのは、ITへの投資金額をパート従業員1名分を目安としたかったためです。

──視察の希望も増えているそうですね。
植村 これまでに国内外から50以上の法人・団体などが視察に来ています。「アズハイム練馬ガーデン(71床・東京都練馬区)」が視察場所となるケースが増えており、3月だけでも、厚生労働省・経済産業省の視察やフランスからの視察団、公社介護事業等運営者連絡協議会(事務局代理・埼玉県住宅供給公社)などが視察に来られました。

現場がわかる専任スタッフにOJTを担当させることによって、18歳から70歳の女性スタッフまで2週間で使いこなせるようになったことや、新築だけでなく築10年以上のホームでも入居者が暮らしながら導入できること、介護現場での経験と意見を集約してメーカーと徹底して議論した結果生まれたシステムであることなどが関心の的となっています。

──今後は。
植村 人材の流動化が激しい中、サービスの質を向上させるために、「EGAOlink」がもっと広まり、センサー・ナースコール・記録の連携が業界の標準的な介護IoTの一つとなればと考えています。
また、入居者のビッグデータを活用して、様々な予測を立て、ケアの質を高め、効率化も促進したいと考えており、AIと連携させ、さらなる進化を目指していきます。

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