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 開院90周年を迎えた社会医療法人河北医療財団(東京都杉並区)は、地域に寄り添う医療を提供し続けている。超高齢社会では、「地域完結型ケア」の実現が不可欠として、病院が中核となる社会システムの構築を目指す。一般社団法人東京都病院協会会長も務める、同財団の河北博文理事長に話を聞いた。

 

──今年90周年を迎えた。

河北 1928年に内科・小児科(30床)の病院として誕生。1957年に総合病院(263床)の認可を取得。今日に至るまで継続して地域の要望に応える医療体制の構築を目指し、住民の健康生活を支えることを「河北」の中心に置いてきた。最終の確定診断ができる病院であり、第一級の臨床研修教育も担っている。

 

 我々の事業は、医療、福祉、介護を担い、地域住民に寄り添うもの。患者とその家族、地域の人達に対し、その個人の尊厳を大切にし、生活に寄り添うことが当然の使命だと考えている。

 杉並区の人口は約56万人。潜在的に非常に大きな医療需要のある地域。継続的に個別ケアを受けられるように仕組みづくりを行い、これを都市型モデルとして全国に発信していきたい。

 

──病院が地域住民を支えるために必要なことは。

河北 「地域完結型ケア」の実現だ。病院医療は、言葉は悪いが「来たら診てやる」というスタンスのところが多い。けれども来る人達は病んでいて、我々医療者は健常者が多い。健常者が座っていて、病んでいる人が来なければ診ない医療なんて、おかしい。我々医療者が地域に出ていくのが必然だと思う。そこで、2006年に家庭医を育てる東京・杉並家庭医療学センター(現・河北家庭医療学センター)を開設した。

 

──かかりつけ医ではなく、家庭医こそが必要なのか。

河北 日本のかかりつけ医制度は、単に診療科ごとに医療行為を提供しているだけで、家庭医のように生活全般までを診ていない。家庭医に近い、かかりつけ医という言葉を使うのであれば、もっと生活に寄り添わないと、医療の提供の仕方も変えられないと思う。プライマリケア体制の再構築は、日本の医療制度の喫緊の課題ではないかと感じている。

 

──40年以上前に往診をシステム化した。

河北 地域住民が主体的に参加し、医療者とともに作っていく医療とケアを実践すべきだと考え、1981年に往診をシステム化した在宅患者サービス(T.H.H.S)を開始。このT.H.H.Sの理念を受け継ぎ、1986年に厚生省(現・厚労省)のモデル事業として立ち上げたのが「杉並地域医療システムズ(SRHS)」だ。

 

 当財団と杉並区内の診療所とで共通のカルテ・診察券・検査伝票を用い患者の診療に関するデータを共有化することによって、充実した地域医療サービスを提供。2004年からは、「河北医療連携の会(KHC)」へと発展させ、236ヵ所(2018年1月時点)の地域、近隣の診療所が登録している。

 

──総務省が推進する「医療・介護地域連携ネットワーク」にも採択された。

河北 全国16ヵ所で交付されている総務省「クラウド型EHR高度化事業」の交付先の一つとして採択された。これまでの取り組みを活かし、東京都西部においても、病院・医科診療所・歯科診療所・保険薬局・介護事業所など、住民が普段利用する施設間で診療情報などを共有し、より良い医療・介護サービスの提供を目指す。

 

 集約した情報をもとに、救急の場合や災害などが発生した際に対応可能な、迅速で適切な治療、継続的な介護体制の構築を行う。

 

──ICTを基盤とした地域づくり構想もある。

河北 社会を大きくつなげていく仕事は「健康」あるいは「生活」がキーワードになる。衣食住に加え、働く、学ぶ、楽しむ、移動することを全てICTで支えてしまう。このような社会システムへのアクセスが1つのアプリで完結すれば、行政の大半の仕事は要らなくなる。生活そのものは民間が支え、できない部分だけを行政が支えていく、そのような社会の構図に変えていきたい。

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