社会保障審議会介護給付費分科会では、勤続年数10年以上の介護福祉士に対する月額平均8万円相当の処遇改善について議論した。昨年12月に閣議決定した「新しい経済財政パッケージ」に盛り込まれたもの。職員の処遇だけでなく、離職の原因になっている職場環境の改善に目を向けるなど、事業者の経営努力を求める意見があった。
今回の引き上げは、経験や技能のある介護職員に対して重点評価を行うことを踏まえながらも、ほかの職員に充てることも含めて事業者の柔軟な運用が前提となっており、「職員からも期待の声や質問がある。上昇幅についての数字が独り歩きしないよう、明示してほしい」(公益社団法人全国老人福祉施設協議会瀬戸雅嗣理事・統括幹事)、「『勤続10年』の定義について、法人を移った場合の扱いなど実際の運用に即した議論を詰めていきたい」(公益社団法人日本介護福祉士会石本淳也会長)といった具体的なルールが詰められていくことになる。
介護関係職種の年平均の有効求人倍率は昨年度で3倍以上と厳しい状態が続くが、一方で介護関係職種や介護福祉士の資格保有者が離職した理由は、「(腰痛を含む)業務に関連する心身の不調」「法人・事業所の理念や運営の在り方に不満」「職場の人間関係」と回答した割合が給与への不満を上回っている。
「多額の公費を使う以上、定着促進・離職防止に繋げなければならない」(公益社団法人日本看護協会齋藤訓子副会長)、「給与は経営努力や労使間の取り決めが前提。組合員にも収入が低い人がいる中で、保険料の拠出が増えていくことに対する理解が得られない」といった指摘も目立ち、事業者に経営努力を求める声が強まってきそうだ。
今後は来年10月の消費税率引き上げに合わせて介護報酬改定が実施される予定。12月に審議報告をまとめる。
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