公益社団法人認知症の人と家族の会(京都市)の鈴木森夫代表理事は12月4日、本紙の単独インタビューに応じ、現在国が進めている要介護度改善に対する報酬上のインセンティブについて「認知症が改善したケースも対象とすべきではないか」との見解を示した。
要介護の原因1位は認知症
2018年介護報酬改定では、自立支援介護の考えに基づきアウトカム評価が導入された。21年改定ではさらにその考えが推進され、利用者の要介護度が改善した場合には介護報酬で評価する仕組みが強化されることが予想されている。
鈴木代表理事は、アウトカム評価の基準が身体的能力の改善に限定されていることについて「介護保険制度がスタートした当初は、要介護状態になる原因のトップが脳卒中であり『麻痺して動かなくなった体をいかに動かせるようになるか』が重要視されていた。しかし、現在は要介護状態になる原因のトップは認知症。認知症の改善が要介護度の改善につながる、という点も評価軸におくべき」と主張した。
さらに、認知症の人の場合は、身体的にはそれほど衰えていないケースが少なくないことに触れ、「現在のアウトカム評価の考えでは、身体の状態が重く、リハビリなど介護の適切な関与によって機能が改善する余地のある利用者ほど、介護事業者に歓迎される傾向が強くなる」とし、身体は元気だが、認知症が重い高齢者の受入れを介護事業者が敬遠するリスクが高まることを懸念した。
しかし、一方でアウトカム評価の指標に認知症の改善を入れることについては「認知症の改善について、それを評価判断する指標が無いのも現実」と困難との見方を示した。
このほかAPC(アドバンス・ケア・プランニング)についても「プランを作る時点で当人が既に認知症になっており、自身の意思や希望が伝えられない状態になっていることも多い」とし、本当に当人の希望に基づく終末期を迎えることができるか、という点で疑問、とした。
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