有料老人ホーム運営の未来設計(東京都中央区)は1月22日、東京地方裁判所に民事再生手続開始の申立てを行い受理された。負債総額は約53億8600万円。有料老人ホーム事業者の倒産では過去最大規模となる。
未来設計は昨年7月に創生事業団(福岡市)が買収していたが、その後の内部告発で前オーナー主導による長期にわたる多額の粉飾決算が発覚。混迷を極める中、本紙の取材に応じた創生事業団は「入居者の生活を守ることを最優先とする」とコメントした。
未来設計は2000年の設立で、1都3県で37棟・2270室の有料老人ホームを運営。業界では数年前から「大型の売り物件」として注目を集めていた。
そうした中、昨年7月に同社の全株式を持つ親会社のオブザーブホールディングスを約50億円で買収したのが創生事業団だった。
しかし、買収後に未来設計の経理担当者の告発で、入居一時金36億円の内26億円の流用や、恒常的な赤字経営にも関わらず粉飾により長年黒字に見せかけていたことが発覚。その上、前オーナーは年間数億円にのぼる役員報酬を得ていたといい、未来設計は資金ショート寸前の状態だった。
創生事業団は金融機関の借入金返済の猶予、高額賃料の本社事務所移転、余剰な本社スタッフのリストラなどあらゆる経費削減を実施するとともに、4億8000万円の資金援助を行ってきた(1月末にも1億1000万円の追加支援を実行する)。
ただ、「消えた入居一時金」などとメディアにも多く取り上げられ、信用不安が拡大。入居者紹介会社からの紹介も減少していた。入居者・家族の不安も大きく、これまでに少なくとも100名以上が退去したとみられる。
短期間での経営改善は難しく一部の債権者との協議が難航。仮差押命令の申立を受ける事態に陥り、資金ショートは免れない状況となり民事再生手続開始の申立てに至った。今後も創生事業団が人的・資金的支援を継続していくと表明、当面の資金繰りに問題は発生しないとみられる。
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