---財政規律と介護保険制度改革~地域包括ケアモデルの確立に向けて~---
第43回 財政審建議の論考
明確に記された建議の内容
前回は、先月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2019」いわゆる「骨太方針2019」の中身を論考し、大変注目していたものの、参議院選挙を直前に控え、社会保障については、改革への具体的な提言の少ない総論的な書きぶりとなったことをお伝え致しました。同時に、あくまで選挙直前の政治的要因であり、政府の進める社会保障改革のスピードが緩められたわけではなく、安心は出来ない旨もお伝え致しました。
本日はそのことを示す一端ともなる6月19日に開催された「財政制度等分科会」において、財務省より示された「令和時代の財政の在り方に関する建議」の中身を論考したいと思います。
ご承知の通り、政府が進める財政再建の最重要課題は社会保障費の抑制です。財政制度等審議会ではこれまでも、社会保障費の抑制に向けた様々な具体的提言が示されておりましたが、今回の建議は、その集大成の1つとなる取り纏めです。そして、「骨太方針2018」に記されていた「介護のケアプラン作成、多床室室料、介護の軽度者への生活援助サービスについて、給付の在り方を検討する」という次期21年改定における注目ポイントの1つであり、「骨太方針2019」においては、政治的配慮から「介護報酬においては、適正化・効率化を推進しつつ」という表現のみに留められていた項目についてが、今回の建議に具体的提言として盛り込まれているのです。
今回の建議で示されている介護に関連する改革案を確認していくと、「軽度者のうち残された要介護1と2の者の生活援助サービス等についても、更なる地域支援事業への移行や、支給限度額・利用者自己負担割合の引き上げ等について検討していく必要がある」、「保険者機能の一層の底上げ、保険者インセンティブの拡充、公定価格の適正化に向けて取り組む必要がある」、「利用者負担を原則2割とすることを段階的に行っていくべきである」、「ケアマネジメントについても利用者負担を設けるとともに、評価手法の確立や報酬への反映」、「多床室については、見直しをする必要がある」、といったようにまとめられています。
いずれもこれまで財務省が示していた改革案の中身と同様であり、その中でもより政策的優先順位の高い提言がとりまとめられているとの読み解きが出来ます。従って、来年度の骨太方針への記載、そして次期21年改定においては、建議に示された改革案が一部形の変更はあれど、実現可能性が高いとみて、我々介護事業者は次なる戦略を練っていく必要があると考えます。
斉藤正行プロフィール
2000年3月、立命館大学卒業後、株式会社ベンチャーリンク入社。メディカル・ケア・サービス㈱の全国展開開始とあわせて2003年5月に同社入社。現在の運営管理体制、営業スキームを構築し、ビジネスモデルを確立。2005年8月、取締役運営事業本部長に就任。2010年7月㈱日本介護福祉グループ副社長に就任。2018年4月㈱ピースフリーケアグループ代表に就任。2018年6月、介護業界における横断的・全国的組織となる一般社団法人全国介護事業者連盟を結成。㈱日本介護ベンチャーコンサルティンググループの代表を務めている。
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