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「第4回長期入院精神障害者の地域移行に向けた具体的方策に係る検討会」が厚生労働省で今月1日開催され、1年以上入院している「長期入院精神障害者」の退院後の受け皿として、病棟の一部をグループホームなどの「居住施設」に転換する構想案が盛り込まれた報告書が、大筋で了承された。
この構想案については、当事者や関係団体からは「病院の囲い込み」「患者の人権を侵害している」と反対が強い。厚労省は具体案を盛り込んだ報告書を夏までに取りまとめる予定。

日本の精神病床先進国でも突出

国内にある精神病床約34万床のうち約32万床が埋まっている。長期入院患者は約20万人に上るとされ、10年以上入院している患者は約7万人に上る。20万人のうち約5万人が毎年退院しているが、新たに毎年約5万人が長期入院に移行している。
日本は病床数、長期入院ともに先進国では突出して多く、また患者は高齢化し、死亡による退院が増加傾向にある。

厚労省は10年前にも患者を地域に移行する改革施策を打ち出していたものの、病床数・入院患者数ともにほとんど減少することはなかった。今回の報告書では、再度地域移行に向け、入院の必要性が低い患者の退院を促進し、病床を削減、さらに退院後の「住まい」の選択肢の一つとして余剰病棟を「住まい」に展開することを容認している。

元患者ら3200人抗議集会に参加

しかし、当事者や関係団体からは「病院の敷地内にある施設に移住することは『退院した』とは言えない」「まだ入院しているようなもの」と懸念が多い。検討会でも、「住まいの自由や自立を定めた障害者権利条約に抵触する」(NPO法人全国精神障害者地域生活支援協議会 伊澤雄一代表)と反対意見が出た。

これに対し、「権利条約に抵触しないように条件をつけていくことが前提であり、また、受け皿になる準備ができていない地域が多い」(成城大学 山本輝之教授)、「民間による病院経営が多いなかで、実際に経費をかけ施設に転換する病院はごく少数」(医療法人青仁会青南病院 千葉潜院長)と、病院経営者側の委員を中心に賛成意見が相次いだ。

先月26日には、政治家や元患者ら3200人が集まり、病棟転換に反対する抗議集会が開催された。また、厚労省が行った入院中の患者を対象にした調査では、「病院の敷地内の施設に退院したくない」と答えた患者は6割に上った。

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