スポンサーリンク

 高齢者の誤嚥性肺炎が増え、口腔ケアの必要性が叫ばれる中、化粧の効果が口腔機能の向上に作用すると話題になっている。資生堂の「化粧療法」の効果について、資生堂ジャパン 事業計画部 医学博士で介護福祉士でもある池山和幸氏に話を聞いた。

──事業内容は。

池山 当社は化粧品メーカーとして、化粧のちからで高齢者に元気で長生きしてもらいたいと考え、1990年代から化粧療法の研究を開始。現在は、ライフクオリティー事業の一環として、高齢者への化粧療法プログラム「いきいき美容教室」や介護、医療スタッフ向けの「ADL向上のための整容講座」を開催しています。これまでに、高齢者を対象とした化粧療法効果の検証を約40の高齢者施設・病院で約1000人を対象に実施し、化粧による心理的効果をはじめ、脳の活性化や身体機能の向上などの効果を明らかにしており、2013年からは、歯科衛生士と連携して高齢者の化粧による口腔機能への影響を検証しています。

──口腔ケアに着目したきっかけは。

池山 2011年に化粧療法を導入した施設スタッフの、「参加者のよだれが止まった」という声をきっかけに、参加者の唾液成分の分析を行いました。その結果、唾液中の嚥下に関わる物質の濃度が変化していることがわかりました。

──具体的には。

池山 2013年から介護施設に入所している平均年齢85・2歳の女性27人を対象に、歯科衛生士と連携して口腔機能評価を実施しました。月1回の美容教室と毎日のスキンケアを3ヵ月間行った結果、嚥下を促す唾液サブスタンスP濃度が上昇していました。さらに30秒間になるべく早く唾液を飲み込む「反復唾液嚥下テスト」では、1回しかできなかった女性の約8割が、2回以上の嚥下を行えるようになりました。
 これまでの見知で、スキンケアによる肌の感覚閾値の変化やメーキャップによる脳活動の変化がわかっており、化粧行為が感覚神経や脳への刺激になり、唾液中のサブスタンスP濃度が変化したと考えられます。 また、化粧をすることで会話の機会が増え、発語機能にも好影響が見られました。話したり笑ったりすることで、口周りの運動につながっていると考えられます。

──男性の利用も増えているそうですね。

池山 「化粧療法」というと、女性の領域に感じますが、整容の一つと考えれば、身だしなみとして男性も対象となります。整容とは、歯みがきなどの口腔ケア、手洗い、洗顔、整髪、そして化粧ですが、男性の場合は髭剃りに置換える事ができます。髭剃りの後に、ローションをつける動作や、口紅をリップクリームとすると、男性でも保湿のために使用できます。肌の手入れをする際に、唾液腺や表情筋を意識することで食べる・話すなど口に関わる機能を維持する口腔ケアに繋がります。

──今後のビジョンは。

池山 化粧療法は、歯科医院の待合室や訪問先の介護施設等で実施できるプログラムです。自分の口に意識が向き、間接的に歯科治療や口腔ケアにつなげるアプローチとして、近い将来、歯科領域と美容領域が連携し、楽しみながら取り組める、新しい口腔ケアを広めていきたいです。

この記事は有料会員記事です。
スポンサーリンク

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

Twitterでフォローしよう