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 地域包括ケアの取り組みにおいては、医師会がどう関わるか、が重要になってくる。全国でいち早く地域の多職種連携のネットワークづくりを先導した柏市医師会に連携のポイントを取材した。

 柏市では現在、在宅医療・介護における多職種連携の会議体制が目的別に設置されている。多職種連携のためのルールの作成や、行政施策への反映について話し合う場である「在宅医療・介護多職種連携協議会」と、年に4回程度行われている関係づくりを目的とした「顔の見える関係会議」で課題の抽出や共有、改善を繰り返している。

 多職種連携の成功事例として知られ、全国から視察が訪れる柏市だが、数年前まで豊四季台団地における孤独死の多発や全国平均より5%も高い病床利用率、在宅医療に取り組む医師がいないなど、課題は多かった。

 2009年に市と柏市にキャンパスを持つ東京大学が、こうした課題解決のための協力を医師会によびかけ、定期的に協議の場が持たれることになった。

 一方、「ほぼ同時期に秋山浩保市長の就任に合わせて市医師会から地域医療を支えるための緊急・災害時医療の体制や疾患ごとの医療連携などを盛り込んだ『10の提言』を提出しました。この頃から市と医師会の協力体制が確立していきました」と柏市医師会の金江清会長は話す。

在宅医療の形 ゼロからの構築

 市と医師会の対話が重なり、本音の議論が進む中で、双方の間で多職種連携の重要性に対する認識が深まった。初めは医師会や中枢医療機関の医師の間で、在宅医療や病院での医療との役割分担が話し合われた。医師会がリードする形で歯科医師会、薬剤師会など関係者に参加を呼びかけ、議論や勉強会の輪が広がっていった。

 「当初は誰を呼ぶべきかわからず試行錯誤していました。少しずつ形を変えながら適切な会議体制ができたと感じています。現在のメンバーがベストではないでしょうか」(金江会長)

 協議を始めた当時のことを金江会長は「私自身も含め、市内の医師は在宅医療に特別の関心を寄せてはいませんでしたが、地域医療をより良いものにしたいという思いは同じでした」と振り返る。

 短期間で在宅医のネットワーク構築が進んだ理由には、在宅医療が普及していなかったため先入観や既成概念にとらわれない理想的なモデルを1から構築できたことが大きい。
 例えば、柏市内をブロックに分けて地区ごとの実情に合わせたネットワークの構築を行い、市民がそれぞれ同水準の在宅医療を受けられる仕組み作りが目指されている。

 「今の体制で対等な話し合いを続けることが柏市の地域包括ケアそのものだと捉えています」(金江会長)

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