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高齢者住宅経営者連絡協議会(以下、高経協)は5月14日、都内で第7回シンポジウムを開催した。テーマは「介護事業経営者は入居者・利用者・家族の迷惑行為からどうやって職員を守るか」。経営者はスタッフをトラブルから如何に守っていくか。聴講者とともに考える場となった。

傾聴、辛抱、報連相 徹底
「貴重な人材守る」義務

高経協ではシンポジウムに先立ち、会員事業者56社を対象に職員に対するハラスメントに関するアンケート調査を実施。回答は有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、グループホーム314ヵ所。入居者数は1万9000人余り。その結果をもとに問題提起を、長谷工シニアホールディングスの浦田慶信社長が行った。

トラブル内容をパワハラ、独自判断基準、パラノイアなどの「主張方法」、セクハラ、ストーカーなどの「問題行為」、思い違いの正当化、現実逃避などの「お門違い」に分類。「問題行為」の件数が最も多かったが、個別ではパワハラ、独自判断基準、思い違いの正当化の経験が多かった。トラブルの相手は、家族が入居者をやや上回った。浦田氏は「行き過ぎた要望で職員の退職やメンタルの不調につながっている。貴重な人材を守ることは経営者の義務」とコメントした。

迷惑行為の事例紹介では、ヘルスケアシステムズの山田寿朗副社長、マザアスの吉田肇社長らが登壇。山田氏は厳しい介護要求、ミスに対する土下座や謝罪・面談の強要などの事例を紹介。「苦言に対してはまず〝すみません〟と言うことが大事。現場では、〝傾聴〟〝丁寧な説明〟〝辛抱〟を掲げるとともに、〝報連相〟も徹底。現場責任者が孤立しないよう仕向けている」という。
吉田氏は入居者同士の諍いに職員が板挟みになっている問題を指摘。「ご意見箱、お客様相談室アンケートなどを通し、常にクレームにアンテナを張っている」という。

座談会では、弁護士の外岡潤氏、世田谷区福祉人材育成・研修センター長の瓜生律子氏らを加えディスカッション。コーディネーターを千葉商科大学の和田義人教授が務めた。外岡氏は利用者側の権利意識の高揚を背景に介護現場でのトラブルが多発していることを踏まえ、契約書の変更ルールについて指南した。瓜生氏は現場におけるハラスメントの実態とその初動マニュアルについて紹介した。

近年、個人情報保護、消費者保護、弱者救済などを理由に入居者・家族から過剰な要望が増え、職員の能力を上回る事柄により、メンタル不調や休職・退職に追い込まれる職員が増えている。介護事業者を糾弾する過度な報道が目立つ中で、介護職員を守る手立てを考えるとともに、経営者ら本社が現場の迷惑行為にどう向き合うかの議論がより一層必要だ。

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