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---医療・介護が変わるto2025---

団塊の世代800万人が後期高齢者になる2025年、認知症の人も爆発的に増える。福岡県久山町の認知症の有病率の研究調査によれば、認知症有病率が生活習慣病有病率の増加により上昇すると仮定した場合、認知症有病率はなんと2025年には20・6%で、700万人にも達するといわれている。
こうした中、政府は18年12月に認知症施策推進関係閣僚会議を立ち上げ、今年5月~6月にも現状のオレンジプランを大改革した新たな「認知症施策大綱」(以下、大綱)を取りまとめることとしている。大綱では「予防」と「共生」を2本柱に据えている。

大綱ではこのため生活習慣病対策を基軸とした認知症予防の目標値を参考値として示そうとしている。具体的には70~74歳の認知症有病率を19年から24年の6年間で6%低下させることを目指す。これは18年から27年の10年間では10%減らすことに相当する。言い換えると「70歳での認知症発症を10年間で1歳遅らせる」ことである。

さて認知症予防の具体的なポイントは以下の3つ、①食生活、②運動、③脳トレである。①食生活、②運動は生活習慣病予防と共通するが、認知症予防では3つ目に脳トレ(認知トレーニング)が加わる。脳トレは生活の中では「趣味・社会交流」のことだ。余暇活動への積極的な参加は、脳を活性化して認知症発症を抑制する。刺激的な知的レジャー活動を週2回以上、皆で交流しながら行うことで脳を刺激する。

こうした脳トレ、食生活、運動による認知症予防の事例を大分県の杵築(きつき)市に見てみよう。杵築市では認知症予防を福岡大学医学部と連携して行っている。1グループ10名程度で4グループ実施している。グループのメンバーは軽度認知症障害と正常高齢者で構成している。午前中は昼食のメニューをグループのみんなで考えて作成する。午後は体操やウォーキングを楽しむ。また古い民家の改築や土地の名産物を作ることもある。こうした認知症予防の評価は半年ごとに実施しているという。

最近ではこうした食事、運動、脳トレの認知症予防の効果研究も盛んだ。15年にランセットに掲載されたNganduらの研究を見てみよう。
この研究では、認知機能が年齢標準より軽度低下した高齢者1260名(60―77歳)について、ランダムに介入群(631名)とコントロール群(629名)に割り付け、2群間比較を行った。介入群は定期的な食事指導、積極的な運動と脳トレを実施した。これらの介入を2年間行った結果、神経心理学的評価の総合点の変化で、介入群に明らかな有効性が認められた。
認知症予防が今や待ったなしだ。

 

武藤正樹 国際医療福祉大学大学院教授

1974年新潟大学医学部卒業、国立横浜病院にて外科医師として勤務。同病院在籍中86~88年までニューヨーク州立大学家庭医療学科に留学。94年国立医療・病院管理研究所医療政策部長。95年国立長野病院副院長。2006年より国際医療福祉大学三田病院副院長・国際医療福祉大学大学院教授、国際医療福祉総合研究所長。政府委員等 医療計画見直し等検討会座長(厚労省)、介護サービス質の評価のあり方に係わる検討委員会委員長(厚労省)、「どこでもMY病院」レセプト活用分科会座長(内閣府)、中医協調査専門組織・入院医療等の調査・評価分科会座長

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