医療情報サービスのウェルネス(東京都文京区)と国際医療福祉大学大学院の高橋泰教授は4月8日、「2次医療圏データベースシステム」の薬局版と、「Ver.6」および「都道府県版」をリリースした。ウェルネス社のサイトから無償でダウンロード可能。高橋泰氏による記念講演会を4月3日に開催した。
「2次医療圏データベースシステム・薬局版」は、薬局(保険薬局)数、薬剤師数など薬局独自の統計値を収録。薬剤師の各機関の従事者数、薬局の株式会社・有限会社などの開設区分の他、診療報酬関連記載項目として、基準調剤加算、在宅患者訪問薬剤管理指導料、無菌製剤処理加算、後発医薬品調剤体制加算などの届け出件数を網羅。同データベースシステムの特色である2次医療圏ごとに日本地図の色分けで、統計を読み取ることができる。
「薬局版」の開発を担当した国際医療福祉大大学院の長谷川フジ子氏によれば、人口当たりの薬局に勤務する薬剤師について、「首都圏近郊、京阪神圏などで多く、北海道、東北の医療圏で極めて少ない」ことや、人口10万人あたりの保険薬局数について、「中国や九州で多いが、薬剤師数に比べ全体的に格差が少ない」ことなどが分かった。
また無菌調剤加算を届出している薬局数については、札幌、東京、名古屋、京都などの都市部で多いが、届出がゼロの医療圏が全医療圏の半数近いことを示した。
「Ver.6」では、全国の病院、診療所に関する統計値を全面的に更新。以前から要望の多かった「都道府県版」もリリースした。
「2次医療圏データベース」は、2次医療圏の病院名、人口、面積、医師数、DPC対象病院などの統計情報。平成23年1月に公開後、高齢化・介護版、小児・周産期版、精神科版などを発表。昨年6月には新しい人口統計データを反映したVer.5をリリースするなど進化を遂げてきた。
無償ダウンロードサービスの利用は、役所や都道府県、大学、シンクタンクなど関係機関で拡大。利用件数は先月で5万2000件を超えた。
「日本の医療の将来を計画するキーパーソンたちが、手軽に2次医療圏の人口推移や医療提供状況を把握し、より良い将来プランの作成に役立てて欲しい」(高橋泰教授)。
高橋泰教授は記念講演会で「これからの医療福祉提供体制のあるべき姿を考える」を発表。2010年から2040年にかけて、0~64歳人口が約3000万人減少するのに対し、75歳以上は約800万人増加することを指摘。2030年ころまで人口減少のペースは比較的緩やかだが「30年以降、人口は急減。2050年には人口は1億を下回る」という。
特に東京周辺では75歳以上人口が激増。統計から「東京・横浜などの都市部は医師が多いが、その周辺は医師が少ない」ことを課題にあげた。逆に「東京23区は介護施設の不足が顕著なのに対し、周辺は介護施設が多い」など、同じ東京でも医療と介護の事情が異なることを示した。
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