報酬の大幅引き下げに加え、国による設置・運営指導指針の策定などで、いわゆる「お泊りデイサービス」の経営環境が厳しくなっていると言われている。こうした中で、事業者は、今後どのような形での事業展開を考えているのか。「樹楽」ブランドで直営・フランチャイズで展開するアクロス(大阪府吹田市)原田健市社長に話を聞いた。
――今回の報酬改定の影響は。
原田 延長加算、中重度ケア加算などの各種加算を算定して、トータルで3~5%程度の減算に収められれば、と考えている。ただし、直営の新規店についてはスプリンクラーを設置するようにしているため、開設コストが多額になっている。経営面での影響は少なくない。
当社の場合は、ネットカフェなど他の事業で利益が出ているので問題ないが、お泊りデイしか運営していない事業者は経営的には厳しいだろう。フランチャイズ加盟店に対しても「取れる加算はなるべくとる様に」と指導していく。
――お泊りデイについては、ガイドラインが定められた。
原田 こうしたルールが定められる背景には、「お泊りデイの実態が、正しく理解されていない」ということがあげられるのではないか。例えば、「お泊りデイは貧困ビジネス」と言われることもある。
しかし、実際には介護付有料老人ホームなどに入居できるだけの資産がありながら「家庭的な雰囲気がいい」「小規模な施設がいい」などという理由でお泊りデイを望む人も少なくない。長期宿泊はケアマネジャーからの要望によるものも多い。
また、認知症の人の中には、個室ではなくお泊りデイのような雰囲気の場所での就寝が適している人もいる。こうしたニーズを無視して、ガイドラインによりお泊りデイの良い点をつぶすような流れにならないか心配だ。まずは、お泊りデイの仕組みを何とか存続させていくことを考えたい。
――会社としては、どの様な対応を考えているか。
原田 今後、デイでの宿泊サービス提供が難しくなることを考え、デイの機能と宿泊機能を分離させていくことを検討している。直営店舗の中には、デイの隣の戸建て住宅を新たに借り上げ、宿泊はそちらで行ってもらっているケースもある。今後はデイ近隣に賃貸マンションなどを借りて、宿泊はそこでしてもらうなどのケースも出てくるだろう。宿泊は無料とし、食事も提供しなければ、法的にも宿泊業には該当しないと思う。これはFC加盟店にも勧めていきたい。
――民家改修型の場合は、2階を上手く活用できないか。
原田 それも考えている。1階は宿泊を提供しないデイとして運営し、2階は高齢者用シェアハウスとして運営する方法などが考えられる。こうした場合、これまではそれぞれに専用の入り口が無いといけない、などの規定があったが、最近の国土交通省の見解などをみると規定が柔軟に適用されるようになってきているため、取り組める事業所も増えてくるだろう。
――会社として、お泊りデイ以外の新規事業を始める予定は。
原田 今年10月に、京都の伏見で2ユニットのグループホームと小規模多機能型居宅介護事業所の併設物件を開設する。デイ以外では当社初の事業となる。ブランドは、お泊りデイと同じく「樹楽」としていく予定だ。また、宿泊サービスを提供しない認知症デイの開設も検討している。認知症デイや、小規模多機能については、FCでの展開も考えている。
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