今回は、大手在宅介護会社で勤務後独立し、現在は実地指導対策など様々な形で介護事業者向けコンサルティングを行っている、ヘルプズ・アンド・カンパニー西村栄一社長に話を聞いた。
「職場の風通しを十分に」
--虐待の原因は何だと思いますか。
西村 そもそも虐待をしたいとか、事件を起こしたくて介護業界に入って来る人はいません。しかし、やむを得ず介護業界に入ってくる人はいます。こうした「向いていない人」が向いていない仕事をしなければならないのは、サービスする側にとってもされる側にとっても不幸なことです。
また、高齢者に対しては、その人の命のことを思ったり、周囲との協調を守ったりするために声をあげて叱ったりする必要性はあるかもしれません。ただし、叱るのと手をあげるのは全く別次元の話です。残念ながら介護に対する熱い想いを持っている人や、一生懸命に仕事をする人ほど、叱ることと手をあげることを同一視してしまう傾向があります。
--それを防ぐには、何が必要ですか。
西村 介護に想いや情熱は必要ですが、それが過剰にならない様に周囲がブレーキをかけることです。例え、入社1日目の新人でも、相手が施設長であっても、施設内で起こっていることについて「おかしいな」と思うことがあれば、遠慮なく言える職場環境が大切です。風通しの良い施設をつくることに事業者は力を注ぐべきです。
--自身は虐待に遭遇したことはありますか。
西村 「これは拘束ではないのか」と疑問に思う場面に遭遇したり、言葉での虐待に遭遇したりしたことは頻繁にあります。例えば、入居者が「家に帰りたい」と職員に訴えたところ「○○さんの家はもうありません。洪水で流されました。火事で燃えました。部屋に戻っていてください」などと対応したり、入居者に対し「もう、何回言わせるの!同じことを何回も言わせないで」などと叫んだりする場面です。
--そうした言葉の虐待は、なぜ起こるのでしょうか。
西村 言葉の虐待に繋がる第一歩は入居者からの要望に対する「ちょっと待って」だと思います。つまり、自分の処理能力以上のことを求められたり、法令やルールが頻繁に変わり、それにより業務が煩雑化したりすることなどに対するストレスが大きいと思います。
それを感じない様にするためには「日々できなくなることが増えていく」という高齢者の特性をいかに理解するかです。それは「この業界で何年働いている」「介護に関する資格をもっている」などとは無関係です。
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