2018年の介護報酬改定などに向け、事業者が取るべき方策について服部メディカル研究所(東京都渋谷区)の服部万里子所長に話を聞いた。
──18年改定について事業者がとるべき対応は何でしょうか。
服部 国は既に要支援、軽度要介護者を介護保険の対象から外す方針を示しています。9月の参議院議員選挙後には法整備が進められていくでしょう。現場の意見を法律に組み入れることができるのはこの8月までです。
しかし、今のところ何らかのアクションを起こしているのは福祉用具とケアマネジャーの業界団体のみです。利用者に不利益が生じることや自らの事業の継続性に危機感を感じているのであれば、法律が制定されてしまう前に行動を起こさなくてはなりません。制定されてしまえばそれを覆すのは難しく、その枠組みの中でいかに生き残っていくかを考えるべきでしょう。
──介護保険財源の厳しさから、今後、保険による適切な介護サービスの供給が難しくなると不安視する声が事業者にはあります。
服部 実はそういった動きはすでに始まっています。私の地元である渋谷区は、訪問介護について横だしサービスを行っています。そのうちの生活援助サービスについて、この4月より介護保険の利用限度額に組み込まれることになりました。
これにより、これまで利用してきたサービスが利用できなくなることが懸念されます。こうした事態について渋谷区ケアマネジャー連絡協議会の総会では、区に対して再検討を求めていこう、という提案もされました。
国は介護保険について市区町村に権限を移していく傾向が強くなっていますが、これにより、同じ様なケースが様々な場面で起こるのではないか、と危惧しています。
「サ付き住宅整備 拡大に落とし穴も」
──高齢者の住まいについてどう考えていますか。
服部 住み慣れた地域で生活し続ける環境を構築するために、国はサービス付き高齢者向け住宅の整備を進めていますが、その効果については疑問を感じます。実際のサ付き住宅入居者は、金銭的な問題からほかの地域から移り住んでいる人の割合が高いのです。
実は、地域包括ケアのコアとして先駆的に拠点型サ高住の建設が進められた千葉県柏市において、特養の待機者は減っていないというデータが出ています。
この事例からわかるように、サ付き住宅は少なくとも特養の代わりの役割は果たしていないのです。また、今は供給が促進されていますが、いずれ小規模デイのように厳しい法改正が訪れることは覚悟しておくべきでしょう。
──医療施策についてはどのように予想していますか。
服部 地域包括ケアの目的には介護サービスの整備のほか、医療費の抑制があります。早期退院が強力に推し進められた結果、精神病棟を除いた入院患者のうち、70歳以上の患者は6割を占めています。入院でお金がかかるのは手術と終末期ですから、医療費抑制の為にも在宅復帰は今後も強力に推進されると考えています。
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