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 日本在宅ケアアライアンス(東京都千代田区)は、全国在宅療養支援診療所連絡会、日本在宅医学会、在宅ケアを支える診療所・市民全国ネットワークなど、在宅医療の普及推進を目指す専門職らが組織する19団体によって構成されている。2015年3月の設立以降、地域包括ケアシステムの活性化や専門職の連携強化などに取り組んでいる。新田國夫議長に話を聞いた。

 

 

──設立の経緯は。
新田 私が会長を務めている全国在宅療養支援診療所連絡会(東京都千代田区)では、2006年の設立以降、全国の支部でミーティングなどにより情報交換を行ってきました。しかし、患者の生活を在宅で支えるためには、医師はもちろん、看護師、ケアマネ、介護スタッフなど、チームによる多職種連携が不可欠です。そこで、4年前に在宅医療に携わる各団体に声かけを行い、日本在宅ケアアライアンスを設立しました。

 

──活動内容は。
新田 あくまでも在宅医療の地位向上が目的で、診療報酬そのものに対して働きかけるという団体ではありません。病院の役割は「病気を治すこと」ですが、在宅医療の本質は「患者の余生を任され、患者本人の意思を尊重し生活を支えること」です。患者を生活者として診て、支えていくためには、患者本人だけでなく、その家族や介護スタッフなどとチームとしての連携を密にする必要があます。このことを多くの人にもっと理解してもらいたいと考え、さまざまな活動をしています。

 

──具体的には。
新田 厚生労働省からの委託業務で、在宅医療を担う人材育成事業に携わっています。2016年度は市町村職員や医療・介護といった幅広い職種を対象に研修会を行いました。17年度は全国47都道府県から、在宅医療を推進する上で中心的な役割を担う地域の医師ら約280人を集めて研修会を実施。居住地域の人口別にグループ分けをして、それぞれの問題点などをワークショップ形式で議論しました。18年度はこの研修会に行政を交えて何かできないかと検討しています。

 

──在宅医療の標準化モデルの構築を目指していると聞きましたが。
新田 在宅医療で求められる手段や考えなどを標準化するための倫理委員会を立ち上げました。在宅医療では、患者の身体状況や容体が常に変化し続けるため、1つのクリニックだけで、患者1人ひとりに対するケアの内容を標準化するのは困難です。そこで、倫理委員会を通じ、19団体の知見を集約し、さまざまなケースにおける対応事例などを蓄積・分析して標準化モデルを構築できればと考えています。

 

──今回の診療報酬改定については。
新田 7対1や10対1などの急性期一般病棟入院基本料の再編・統合は、今後の急性期医療における病院のあり方に一石が投じられたと思います。超高齢社会の中で、入院医療から在宅医療への促進が明確になりました。

 これを踏まえると、外来や入院を中心とした医療から在宅医療と入院医療の連携関係を築くことが自然の流れと言えるでしょう。急性期医療の病床数として現在の数が必要とされなくなる時が近い将来訪れます。その時、病院再編はさらに進み、病院運営はさらに困難な状況になると思います。これを機会に200床以下の病院は、在宅医療に取り組み、地域住民の意向に応えて欲しいと思います。

 

──在宅医療に必要な住まいとは。
新田 患者には生活者に戻れる環境を提供するべきであり、身体状況や病状などの変化に応じ、患者本人が望むカタチで暮らし方を提案できる住まいが必要です。地域拠点の役割を担う住まいとしては、看多機なのかもしれません。今後は、リハビリに主眼を置いた在宅復帰型や看取り対応型などの機能分化型の高齢者住宅が求められるようになると感じています。

 

──今後については。
新田 今回の診療報酬改定において、かかりつけ医の在宅医療への取り組みが評価されたことは、重要な点だと思います。受け皿は地域に任せられたと言えるでしょう。今後はかかりつけ医、在宅療養支援診療所が一体となって地域の住民を支えていくことができるようにチームによる連携強化を促進していきます。
 また、地域住民を支えるために頑張っている医師に、もっとスポットライトを当ててもらうためにも、国がきちんと在宅医療について評価できる仕組みづくりに努めていきたいと考えています。

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